第29話

『──美羽、その服…外で着るの禁止だって、言ったよね?』





帰宅した美羽が着ていた洋服は、以前俺が"外で着ないで欲しい"と頼んだモノだ。胸元が広くあいていて、それだけで男の視線を釘付けにするような…そんな洋服。






俺と目を合わせた美羽は、ふいっと視線を逸らして…そのまま黙ってリビングを出ていってしまった






───何なんだよ、あいつ






無視をされていることに、苛立ちを感じ始める。なぜ遅くなったのかも言わずに黙ったままなんて…非常識すぎない?







美羽が帰ってきたので…大人しく一人で夕飯を食べる。どれも…手の込んだ手作りのものばかりで…先程苛立った気持ちが浄化されていく







喧嘩をしたい訳じゃない、やっぱりちゃんと謝って…話し合いたい。






急いで夕飯を済ませてリビングを出ると、脱衣所で髪を乾かしている美羽を見つけた






『──美羽、貸して。俺が乾かしてあげる』






美羽の風呂上がりのタイミングで俺が家に居る時は、いつもドライヤーを持って俺のところにやって来て、「楓、髪の毛乾かしてー」っと言って甘えてくる美羽。





仕事が溜まっている時や、気分が乗らない時は基本断るが…たまに乾かしてやったときに嬉しそうに笑う美羽が可愛くて…些細なことで笑ってくれる美羽を見れるのが、嬉しくて、、






そっと髪に触れた俺の手を、大袈裟に振り払った美羽は…まだ乾ききっていない髪をそのままにして…寝室に逃げていってしまった

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