第24話

「まだ─…示談が成立していないので。」



しつこい男だな、そんなに勤め先が大事?そこまで言われると逆に訴えて迷惑を掛けてやろうかという気になってくるだろ。






『……悪いと思ってるなら、夕飯…ご馳走してください。』




「──はい?」



『お察しの通り、職を失ったので。退職祝いにご飯奢ってって言ってる』



「……僕と食事をしても、貴方が失った職は戻りませんよ?」



『だからっ!悪いと思う気持ちがあるなら、美味しいご飯食べに連れてってって言ってるの!それで何もかもチャラにしてあげるんだから!黙って"分かった"って言えばいいんだよ!それとも訴えてやろうか?』



「──分かりました、店を手配しておきます」









これが、私と楓のハジメテの出会い─…





後で聞けば、持っていたコーヒーも…クソ副社長のモーニングコーヒーだったみたいで。その頃からヤツは既に私に喧嘩を売っていたということになる。






今思い出してもクソ副社長のクズ具合と、私の元職場先のヒステリック店長のことはムカついてどうしようもない思い出だけど─…





汚れた服になんの迷いもなく、自身のジャケットを掛けてくれた優しい楓のことは…忘れたくない、大事な思い出として残っている。






楓は出会った時からそういう人だった。不器用で機械みたいな人間。アンドロイド…人造人間と会話してるのかと思えてくるような冷血さ。







そんな楓がたまに見せる人間らしい表情が、大好きで…もっと引き出してあげたくなって…そばに居たいって、思ったんだっ






──…だけどね、





突き放されるばっかりだと、私だって傷つくよ

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