第20話
思えば初めて出会ったときから既に、楓はクソ副社長一ノ瀬に縛り付けられていた。
私と楓が出会ったのは─…
『っうわ!!なにっ、最悪っ!!!』
「─……あ…、すみません」
早朝、職場に出勤している道中で─…前方から小走りで走ってきた楓と、スマホを見ながら歩いていた私─…楓が一瞬、腕時計を確認し…私がスマホから目を逸らしよそ見をした瞬間─…
お互いの前方不注意により、激しく衝突した。
ただぶつかっただけなら良かった。楓は手にテイクアウトしたコーヒーを持っていて…ぶつかった衝撃でそれがぶちまけられて、私の着ていたワンピースはコーヒー色に染まった。
「─…あの、大丈夫ですか?」
同じ勢いでぶつかったくせに、私だけが尻もちをついていることに苛立ちながら、スマートに手を差し伸べてくる男が一体どの面下げて謝っているのか確認してやろう…っと、顔を上げてぶつかった相手を視界に入れた瞬間─…
ドクンッて…不覚にも、胸がときめいた
─…なんだ、このビックリイケメンは、
どタイプの塩顔に、スーツ姿で背の高い男。
うわぁ、かっこいい─…
「………大丈夫、そうですね。申し訳ありません、急ぐので…コレで新しいお洋服を購入してください。では」
座り込んだままの私の膝の上に、1万円札を複数枚置いて…立ち去ってしまった男
いや、クズかよ…何でも金で解決出来ると思うな?…っとは思ったものの、余程急ぎの用があったのかなぁっと思うと…私みたいな女に大金を払う羽目になったあの男を少し不憫に思った
──…っていうか、
『痛いっ、』
尻もちをついた際、手をついた時に…手のひらを負傷していたらしい。実はずっとヒリヒリと傷んでいる
おそるおそる手のひらを眺めると、流血しているのを確認して慌ててグッと手を握りしめた
社会人にもなって、情けない。だけど昔から血を見るのは苦手だった。
───最悪だ、これじゃあ仕事にも支障が出る
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます