第6話

顔を見たら一言文句を言ってやろう。





3時間もの長い時間寒空の下で並ばされた挙句、テメェの上司サマの手土産のせいで、クレカを盗んだ疑いをかけられたんだぞ。欲しくもないケーキを大量に持たされて疲れた。そろそろ私の機嫌取って貰っていいですか?小山内秘書。








「──美羽、待たせてごめん。助かった。じゃあ、気をつけて帰って」








顔を見て文句を言う…なんてことが叶わないのはもう慣れっ子。なぜなら楓が待っていたのは私ではなく、"チーズケーキ"だから。別にいい。心の中でいっぱい罵ってやったから…いい







でもね、楓…私が聞きたいのは謝罪じゃなくてお礼の言葉だよ。"来てくれてありがとう"って、楓からのその一言で全部報われるのにっ






あーあ…最悪な一日だ。ここに来るまでの間、走って駅のロッカーに寄って"余分な手土産"を預けてきた。あれを持っていたら楓に、、





「──なに、余計なものまで買ったの?専務のカード使ってないよね?チーズケーキ以外、要らないんだけど…仕事のデキない女っ、嫌い」





なんて、言われそうなので。そうならないようにロッカーに預けてきた私の奥ゆかしい気持ちなんて、塩人間小山内に…分かるはずがナイ。






カフェで待ち合わせなんて言ってくれたから、少しは一緒に居られるのかな…なんて期待したのに…1人取り残されて店内で流れるクリスマスソングを聞くはめになるとは。……情けない。






毎回…今日こそは別れてやるっとか、次パシリに使われたら絶対に別れる!!っとか…色々考えたりするけど、結局別れられない。私は楓のことが好きだから、別れたくない。

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