第52話

『吏菜、そろそろ手…離して?』



「えぇ…どうしようかなぁ?ふーくんの目をずーっとこうやって塞いでおけば、ふーくんが余計なものを見る必要は無いし、ずっと私の声だけを聞いて生きていけるんだよ?」




……それは最高です。



でもそれだと吏菜のことを見ることも出来ない





『余計なものは元から視界には入ってこないから、手…離して?吏菜の顔が見たい』




なんて正直に言えば、渋々手を離してくれた吏菜。そっと目を開くと…目の前に居たはずの貴弘の姿が無かった。




『……っあれ、貴弘は』



「余計なもの、視界に入れない約束はどうしたの?」




ガタンっ…と音を立てて先程まで貴弘が座っていた席に腰を下ろした吏菜。…どういうこと?




『貴弘は、俺のともだちっ…』



「─…友達、要る?あの人本当に友達かな?」



『……え…?』



「吏菜の楓羽に余計なことを言うあの人は、私たちにとって”余計なもの”だって思わない?」




なにを言ってる?本気?それとも冗談…?




「消えちゃえばいいな、って思ったら…消えちゃった。不思議だね?元の世界に帰ったのかもね」




……俺が目隠しをされている間に、どうやら貴弘はどこか違う次元の世界へ飛ばされてしまった…らしい。




って、そんなわけないよね?

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