第40話
フラフラと教室を出た俺の視界には、もはや吏菜以外の人間は映らない。
「…っちょ、大丈夫かっ?!小山内?!」
「あ、ごめん……小山内くんっ?大丈夫?」
「痛ってぇ…っあれ、楓羽?!どした?!」
すれ違う人間とぶつかっては心配するような声を掛けられるが、吏菜に無視されてからずっと胸が苦しくて息の仕方すら忘れそうな勢いの俺はいま、謎の吐き気に襲われている。
『……吏菜っ、』
今にも倒れそうなこの俺を、たった一言で現実に引き戻すことが出来るのは─…
「…………ふーくん」
この世界にただ一人、吏菜だけ。
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