第31話
吏菜は最初に言った言葉の通り、片時も離れることなく俺のそばにいた。
「ふーくん、着替え置いとくね?」
「ご飯持ってくる!一緒に食べよう」
「お風呂入ろうか、アワアワのお風呂だから安心して?見えないから」
吏菜の許可が出た時だけベッドから降りて手錠を外すことを許される。別に、出ていこうと思えばいつでも出ていくことが出来る。それでもそうしないのは─…吏菜が居ないと俺の方がダメになるって分かってるから。
『…吏菜、髪乾かしてやる』
これまでもお互いの家を行き来して泊まったことなんて幾度とある。その度に風呂上がりの吏菜の髪を乾かすのは俺の役目だった。
「いーの?やったぁ!!」
繋がれた手錠を外され、部屋の中を移動することを許された俺は…ドライヤーを棚の一番下の引き出しから取り出して慣れた手つきでコンセントにプラグを差し込む。
髪を撫でるみたいにして、ドライヤーの風を当てていけば…目を背けたくなる頭皮に残る傷跡
これを見る度に俺は、生涯吏菜に尽くし続けようと再確認することが出来る。
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