第23話

物音ひとつ無い保健室、時計の秒針が時を刻む音だけがリアルに響くその部屋に─…バンッ、っとまるでドアが破壊されたかのような…そんな爆裂な音が突然響いた。





「っあ…ちょっと、」



保健医の引き止めるような声が聞こえた直後、やけに近いところからカーテンをシャっ…と開けるような音がしたので目元を覆っていた腕を退かして目を開けてみれば─…





「─…楓羽っ、」




開いたカーテンの端っこを握りしめて、俺をジッと見つめる…泣き顔の吏菜の姿が視界に入った。





『り…なっ…?どーした、何で泣いてっ』



「ケガしたって…階段から、落ちたって、、」




ボロボロと瞳から大粒の涙を零しながら、ポツリポツリと語り出す吏菜。おそらく…貴弘が知らせに行ったのだろうけど、そんな大ケガをした訳でもないのに…大袈裟だな。




『あー…足首、ちょい捻っただけ。全然余裕だよ、普通に歩けるし…何も問題ない』




嘘をついた。普通に歩ける、というのは嘘だ。だって本当はめちゃくちゃ痛い。俺は痛いのは苦手だから…保健室まで来る道中で貴弘に肩を借りながらひたすら『あー…痛い。死ぬー』と嘆きながらここまでたどり着いた。




でもまぁ…俺みたいな奴でも、好きな女の子の前ではかっこよく見られたい…とか思っちゃうわけで。

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