第22話

「元気なのはいい事だけど、廊下は走っちゃダメだよ…」



貴弘に肩を借りて連れてきてもらった保健室にて、テンプレートのような文言を保健医のオバサンに言われ『すみません』と謝った俺の隣で未だメルヘンがどうのこうの言って頭を抱えている貴弘。




右の足首を捻挫してしまったらしく、湿布を貼られその上から大袈裟にも包帯をグルグルと巻かれた。…暑いな、蒸れるな、嫌だな。



「次の授業まで、ゆっくりしていく?」



なんて言いながらお茶を出してくれるオバサン保健医。有難くソレを頂戴して飲んでいる俺の横で貴弘は─…




「……うん、思ったんだけど後でバレる前に先に自首した方が罪が軽い気がする。ってことで俺いまからメルヘンの世界へいざなわれてくるわ」



敬礼をして見せた貴弘は懲りることなく走って保健室を出ていってしまった。




やれやれ、といった表情をみせながら「ベット使っていいよ」と言ってくれた保健医さんに甘えて、ゴロンとベットの上で横になる。




──…吏菜、まだ怒ってるかな




頭の中の99.2パーセントくらいは吏菜のことでいっぱいの俺は、残りの0.8パーセントくらいのキャパで他のことを考えて生きている。




だからすぐにキャパオーバーを起こして、こんな風に馬鹿なことをしてしまう節があるのはもう仕方がないことで。



『……嫌になるよ、』



目元に腕を乗せて、真っ暗になった視界の中で俺に笑いかけてくれる愛しい吏菜の顔が瞼の裏に映る。




好きすぎて、しんどい。




いっそ嫌いになれたら、どんなに楽だろうか。

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