第14話

「針千本も飲んだら、楓羽が死んじゃう」




急に、顔面から笑みを消して真顔でそう述べた吏菜は…俺から視線を外して再び弁当を食べ始めた。




「針を千本飲ませたいのは楓羽に話し掛けてたあの女。私と楓羽が付き合ってるって知ってるのに…わざわざ楓羽の気を引くようなことして許されると思ってるのかな。あーあ、憂鬱だ」




早口で淡々と話す吏菜に、ザワザワと胸が騒ぐ。動悸で息が苦しくなってきて…堪らず吏菜の手を掴んでしまった。





「……ん?どーしたの?」




さっきまでの優しい笑顔なんてもうそこには存在しない。冷たい視線と声色を俺に向ける彼女に…心拍数がどんどん上昇する。




『…りー、ごめん。許してっ』



情けなくも、泣き出してしまいそうなほど弱々しい声で吏菜に縋って見せれば─…




「………やだ」




っと言って、手に持っていた弁当箱を放り投げて…俺の方を一切見ることなく、そのまま屋上を出ていってしまった彼女。




──…終わった。




死刑宣告を受けたも同然の俺は、フラフラと立ち上がり…無意識に吏菜が放り投げて散乱してしまった尊い手作りの食材たちを拾い弁当箱の中に収め、食べられそうなものにふぅー、っと息をかけて口に運んだ。





……放課後までに何とか修復しなければ、一緒に帰って貰えなくなる。




上手く働かない頭を抱え、吏菜の分と自分の分…二つの弁当箱を手にして一人教室に戻った

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