第13話
その時、視界の中で吏菜がプチトマトに爪楊枝をグサリとぶっ刺したのが見えて…背筋がぞっとする。
「……図書室、行かなくていーの?」
どういう訳か、吏菜は既に俺と図書委員のやり取りを知っているみたいだった。
『吏菜っ、俺…』
「嘘、ついたら…針千本飲まないと、だね?」
トマト付きの爪楊枝を俺に向かって差し出してくる吏菜。……針って千本も飲めるの?
近付いてくるトマト付きの楊枝を、針だと思って飲み込めば…吏菜は許してくれるのだろうか?
『………針を千本は無理かもしれないから、とりあえず楊枝一本、飲んでみる』
すぐ近くまで来ていた苦手なプチトマトを、楊枝と共に口に含んだ俺。
そんな俺を見て…吏菜は満面の笑みを浮かべる
「……じょーだん、だよ?」
笑顔を崩すことなくそう言った吏菜は、プチトマトだけを俺の口内に残し…爪楊枝を引っこ抜いて弁当箱の蓋の上に乗せた。
口の中に広がる苦手なトマトの風味に顔をしかめながらも、何とか咀嚼して飲み込んで見せれば…水筒のお茶をコップに入れて俺に手渡してくれる吏菜。
「ふーくん、トマト食べれたね。偉いね」
ご褒美だよ、っと言って…自分の弁当箱の中の卵焼きを俺の弁当箱に送り込んできた吏菜。
……卵焼き増えた、嬉しい。
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