第8話

『手っ取り早く結婚して、三年後くらいに離婚してくれるような優良物件がこんなガチ勢の中に居るわけないか』





会場の外の喫煙スペースで、タバコを吸いながら独り言を呟く着物姿の女…なんて、もはや誰も声を掛けてこない。そろそろ帰ろうかな、っと灰皿にタバコを押し付けた時─…





「─…今の話、詳しく聞かせてくれないか?」




同じように喫煙スペースに入ってきたスーツ姿の男。彼がタバコに火をつけたのを横目にみながら、自分も同じようにタバコに火をつけた




彼は私の結婚したい理由を聞き終えると、ふぅ…っと、ひと息ついてから手に持っていたタバコを灰皿に捨てて、、





「それ、立候補してもいいか?」




なんて驚きの発言をしたあと─…




「俺も母親に結婚を急かされて、毎日見合い話を持ちかけられて困っているんだ。元々誰とも結婚するつもりは無かったし一生独身で仕事だけして生きていくつもりだった。」





っと、なんとも興味深い話を語りだし…彼は自分自身のことを更に細かく教えてくれた。





古くから続く家業の跡を継ぐ為に、今は副社長という立ち位置で仕事をしていること。仕事が大事で恋愛には興味が無いこと。




とりあえず一度結婚して母親を安心させてから…数年後に離婚する。それでもいいと言ってくれる女性を探して今日ここに来た─…




なんて、私と同じようなことを考えてこの戦場に訪れたものの、ガチ勢たちに囲まれて居場所がなくなり…この喫煙所に逃げてきたところ、私の独り言を聞いて声を掛けた、、って。





『…え、いいんですか?!こんな不純動機しかない私と結婚なんてして、』



「いや、俺も負けてないと思うけど?」




まさか、ここでこんな運命的な出会いをするとは思わなかった。探し求めていた人物に出会えた…そんな感じ。”ちょうどいい人”って…そんな立ち位置の人─…

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