第6話

「だいたい…そこまで問題視することか?お互いに、気がある訳でもないし。俺は籍さえ入れてもらえれば別に一緒に暮らしてもらう必要は無かった。それをキミが、」




『そのことに関してはっ…私の都合に合わせて頂き感謝しております。だから困ってるんですよ!私は今日から貴方の家で暮らす予定だったので住んでたアパートも引き払ったし、今日の午後には荷物が届くように手配済みで…って、今何時ですか?!』




「………11時42分、」




『…荷物っ、12時指定です!…まさかいま家に娘さん一人で居るとか言いませんよね?』




「─…何か、問題でも?」






っは?!コイツ、まじか。本当に父親?!家に小学生の娘を一人置いて婚姻届を出しに来るとか…正気の沙汰ではないぞ。






『─…帰りましょう、娘さんが心配です』





今のご時世、宅配を装って家に侵入したりする輩がゴロゴロいる物騒な世の中だからな。小学生を一人で留守番させるなんて危険すぎる。





絢音あやね、いいのか?」




─…私の名前、覚えてたんだ




『いいも何も、今更…後には引けないので。約束はちゃんと守ってくださいね?律希さん』





子どもが居ると告げられたところで、今更ぜんぶ無かったことになんて…できるわけが無い。





お互いの利害が一致した─…だから結婚した。それだけ、この結婚に”愛”なんて必要ない。




なにも恋愛に限った愛情ではない─…家族愛なんてものを育む必要も、無いということだ。

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