第29話

「ーー・・・萩花?あれ、俺なんでここに居るんだっけ・・・っつか、すげぇ腰痛い」






昼過ぎに目を覚ました凪砂は、何も覚えていないといった様子で、困惑した顔を私に向けた。







それもそのはず、凪砂は昔からお酒が飲めない。少し飲むだけで顔が赤くなって、倒れてしまうような・・・身体がアルコールを拒否するタイプの人だった。






だから昨日お酒の匂いがした凪砂は、やっぱり酔っていて私とセックスした記憶など全く残っていないのだろう。






もちろん、、寝言で優香の名を口にしたことも。






『いや、凪砂さぁ・・・夜中にいきなり私の部屋に来て、突然服脱ぎ出したから焦ったよ〜・・・しかも、そのまま床で寝るから私がベッドに運ぼうとしたんだけど、自慢の筋肉質のおかげでめちゃくちゃ重たくて、何回か床に落としたから・・・それで腰痛いんじゃない?ってか、いい大人なんだから、お酒に飲まれてどーするのっ!』









こういう時、自分でもよくこんなにもペラペラと嘘がつけるなぁっと感心してしまう。おそらく仕事柄お客様と会話してる間にそういうスキルが身についたのだろう。








凪砂は一瞬目を細めたものの、、






「そうか・・・悪かったな、萩花」






納得したのかそれ以上何も言うことなく、その後すぐに私の部屋を出ていった。








そして、それから二週間後の私の例の誕生日の日に、別れて欲しいと告げられた。あの時、別れる事に対して、妙に納得出来たのは凪砂の寝言で言っていた、【⠀ゆうか 】の一言があったからだと今になって思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る