第21話

***




凪砂と別れた私の誕生日が二月の終わり頃だったので、その後すぐに三月に入って美容室にとっての繁忙期【⠀卒業&入学シーズン 】を迎えた。





卒業式、卒園式に備えて当事者はもちろん、その保護者も身なりを整えるべくして、美容室に駆け込む人が多い。






それが終わると今度は入学シーズンを迎えるため、四月の初めの入学シーズンを終えるまでは毎日が土日ように慌ただしくバタバタとする。







だから、あまり凪砂のことを考える時間がなかったので、何とか毎日をやり過ごすことが出来ていた。






「萩花店長〜・・・今日もレッスン付き合ってもらっていいですかぁ〜」






ーー・・・店長





凪砂と会えることを原動力にして、その為にとにかく稼ぎまくった20代前半の私は、気がつくと店の誰よりも指名客をつけた売れっ子美容師になっていて、26歳の時から店長を任されていた。






『うん、もちろんっ!っあ、その前に何か食べて力つけよう・・・ピザの宅配のチラシってこの辺に無かったっけ?』






っとまぁ、こんなユルい店長だけど後輩たちはしっかり育ってくれていて、営業終わりにも進んで自分たちからレッスンを見てくれと毎日頼まれていた。







それが今の私にとって凄く有難いことだった。帰ってもどうせ凪砂のことを考えるだけだし、遅くまで誰かと一緒に居れば、少しでも忘れられて気が晴れた。

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