第22話

そんな風に慌ただしく過ごし、四月に突入してすぐのことだった。






いつものようにヘアカラー剤を調合して混ぜていると、、急に目眩がして手に持っていたカラー剤を床にぶちまけた







「っえ・・・萩花どうした?それ冗談でやってんなら全然笑えねぇけど」






たまたま一緒にカラーブースで薬を作っていた、同期の吉岡よしおか 颯斗はやとに一部始終を見られ、そんな可愛げのないことを言われた。








コイツは私と同期でずっと一緒にやってきたのに、自分ではなく私が店長の座に就いたことが気に食わないらしく、何かあれば常々文句を言ってくるめんどくさい奴だ。






『あぁ〜・・・ごめん、何か調子悪くて・・・』






これ以上文句を言われる前に片付けようと、床にしゃがみ込んだ時だった








『ーー・・・っ』






猛烈な目眩と吐き気に襲われて、バランスを崩し床にぶちまけたままのカラー剤の上に倒れ込んでしまった









「っは・・・?え、ガチのやつじゃん・・・ちょ、お前どうせ倒れるなら後ろに倒れろよっ!カラー剤クソ飛び散ったじゃねぇか」







私の身体を優しく起こしながらも、しっかり嫌味を言うことを忘れない吉岡に呆れつつ、何か言い返したいところだけどそんな余裕がないくらい、原因不明の気持ち悪さに震えた。






ーーー・・・昨日お酒飲んでないよなぁ







二日酔いのようなその感覚に、とりあえず昨夜何か変なものでも摂取したかと記憶を辿るけど、特に思い当たる節がない。






「とりあえずお前、その状態で働かれても迷惑でしかないから今すぐ帰れ。この後のお前の客は俺が引き継いでやるから、大人しく帰宅しろ。分かったな。」






吉岡はそう言うと、カラーブースから出ていって代わりに一人アシスタント香菜かなちゃんが入ってきた。







「萩花店長、大丈夫ですかぁ?!吉岡さんに聞きましたっ・・・私、家まで送っていくので一緒に帰りましょう!」






お客様への電話対応なども大丈夫なのでとにかく帰れと吉岡が言っているみたいで、ここで私が帰らなかったら香菜ちゃんが吉岡に責められかねないので、大人しく甘えさせてもらうことにした。

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