第13話

***




「ーー・・・悪い、長引いた」





完全に過去にトリップしていた私を、たった一言で現実に引き戻した凪砂は、呼び出しの電話ではなかったのか、先程と同じように席に着いて、テーブルに並んだまま手をつけていなかった料理を食べ始めた







そういえばこの人・・・【 付き合おう⠀】と言ったときも・・・平然と蕎麦食べてたもんなあ、、






別れ話をすることも凪砂にとっては、そこまで重要なことではないのかもしれないと思うと、今更価値観の違いに恐怖を感じた






「萩花?食わねぇの?お前ここのコース料理食いたいって言ってだろ。」





一瞬、先程の別れ話はすべて私の妄想で、今でも凪砂は私の恋人なんじゃないかという錯覚を起こしそうになる






ーーー・・・でも






「俺、横浜から異動する事になったから・・・もう会うこともないと思うけど、仕事・・・無理しすぎるなよ」






もう会うこともない、、っというのは次の勤務地を私には教えないという意味なのだとすぐに分かった






ちょうど付き合うことになった二年ほど前から、凪砂は横浜にある保安部に異動して来ていたので、いつでも会える距離に居るという謎の安心感があった






それが再び遠距離になるのかと思うと普通に寂しいし、不安になるけど・・・私はもうそんな心配をさせてもらえないということだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る