第8話

「ーー・・・悪い」





そう言って席を立つ凪砂なずなの後ろ姿を、私は今まで数え切れないほど見てきた






ーー・・・そう、もうずっと前から






私は凪砂の背中を見続けてばかりだ。








***






私と凪砂は、海上保安庁や公務員の集まる婚活パーティや、友人の紹介といった運命的な出会い方をした訳では無い






もっともっと、ベタで良くある"高校の同級生"というやつで、凪砂が海上保安庁に入るずっと前、学生の頃から彼の事を知っていた









っと同時に、その頃から私は凪砂のことが好きだった。昔から背が高くてかっこよかった凪砂はとにかくモテたけど、凪砂には"優香"という彼女が居たから、他の女子が近づくことなんて出来なかった







皮肉にも私は優香とは中学の頃から仲が良くて、そのおかげで凪砂と距離を縮めることが出来た。凪砂も優香の友人である私を認識してくれて、凪砂の友達も一緒に交えて、高校時代はほとんどみんな一緒に居た







高校を卒業してそれぞれの進路へ向かっても、その関係性は変わらなくて、凪砂は相変わらず優香と続いていたし、他のみんなとも時間を合わせてたまに集まったりしていた







しかし、その関係性が崩れたのは優香が大学4年になった年の夏のことだった。






大学の友人と沖縄に旅行に行った優香は、そこで水難事故に遭い、帰らぬ人となってしまったのだ






その間、海上保安大学校に通っていた凪砂は、実習期間だったのか、訓練だったのかは知らないけど、全く連絡がつかず、、凪砂が優香の死を知ったのは、優香が亡くなってから二週間が過ぎた頃だった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る