第9話

それから私は、凪砂がバカな考えを起こすんじゃないかとヒヤヒヤして、休みの度に凪砂に会いに行った






会いに行くと言っても、私は高校を卒業したあと4年大学へ行っている皆とは違い、美容の専門学校を二年で出て既に美容師として働いていたから、まとまった休みなどは取れなかったので、顔を見てすぐに帰る、、っと言った表現の方が正しいかもしれない、、







それは私の休みが少ないこともあったけど、凪砂の通っていた海上保安大学校が広島にあったことが一番の要因だった。





行っても会えないこともあったし、凪砂の友達にも、慰めにしては度が過ぎていると、何度も注意されたけど・・・凪砂から来るなと言われるまでは続けるつもりで通った







凪砂と会う時はいつも事前に凪砂の大学校の近くのカフェや映えスポットを探して、時間を無駄にしないように私が率先して凪砂を引っ張り回した







優香のことを考える隙を与えないように、メールも電話も使える手段は何でも使って連絡を取っていた。








そんな私たちの関係が少しだけ変わったのは、凪砂が"潜水士"として地方に配属されることが決まった時だった







「来月から福岡勤務になった。お前さ・・・俺を一人にしない為にずっと会いに来てたんだろ?お前が騒がしかったおかげで、余計なことを考える暇なく過ごせた。感謝してる」







凪砂は私が友達として、元気づけようとしていたと感じていたらしく、お別れの言葉みたいに私に語りかけてきたのを今でも覚えている







「配属されたら、今みたいに休みもゆっくり会えることはないと思う。だからもう俺に会いに来るのは今日で最後にしろ。お前、これ以上俺の面倒ばかり見てると自分の婚期逃して、人生台無しになるぞ」






ーーー・・・会いに来るな






あの頃の私は、凪砂にそう言われることをずっと待っていた。拒絶されたとき、初めて自分の気持ちを伝えていいような気がしていたから。

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