その4

 母は厳しい人でした。

 母に言われ、小学時代の私はひたすら勉学に打ち込んでいました。

 門限はそこまで厳しいものではありませんでしたが、それでも刻限は厳守せねばならず、私はいつも五時のチャイムがなると急いで友達と別れ家に駆け込んでいたのを覚えています。

 母は裕福な生まれでしたが、諸事情により金銭的に困窮していました。ですので母は、私の私立小学校の入学も有名塾への入塾も泣く泣く断念したようで、その不服なる思いを度々口にしていました。


 母は優しい人でした。

 幼い私に真剣に道徳を説いてくれました。

 あなたが正しいと思ったことをしなさい、どんな時でもそれを心がけていれば、いつか報われる。と、よく言い聞かされたのを覚えています。今思えばそれは、自分に言い聞かせていたのかも知れません。

 彼女は寒い夜、震える私を暖めてくれました。毎日仕事で疲れていても、私と向き合ってくれました。

 私はそんな母が、大好きでした。


 母は可哀想な人でした。

 彼女が隠れて泣いているのを見てしまったことが何度かあります。

 男の名を口に裏切られたと嘆き、そして声を殺して泣いていました。その名は、僕の父親だった人の名前でした。

 幼い私はそれを見る度、怒りという感情が湧き上がりました。私は父を恨んでいないというのに、捨てられたなんて思ったことないのに、自分にそんな感情があることが不思議に思えるほど、それは唐突に起こりました。


 私の父は長井 道則ながいみちのりといいます。

 父は不思議な人で、本にとらえどころのない人でした。

 私が物心ついた時には彼は既に母と別れていました。母は普段、父のことを滅多に口にしません。

 不思議なことに父は、私が放課後に友達と遊んでいるとふと現れることがありました。

 父は私たちにいろいろな事を教えてくれます。友達は楽しそうに父と話していましたが、私は母のこともあり、少し離れた心持でそれを眺めていました。

 どんな仕事をしているのか、どんな性格なのか、どんな生活をしているのか。聞きたいことは沢山ありましたが終ぞ知らぬまま、今の今まで過ごすこととなりました。


 母と父は離婚しているのに、何故彼と私たちの苗字が一緒なのか。疑問に思い、母に尋ねたことがあります。しかし、彼女は誤魔化しそれに答えてくれませんでした。おそらく婚氏続称の手続きをしたのでしょうが、その意図は未練でしょうか。


 …もしかしたら、見返してやりたかったのかもしれません。


 彼女の社会的正当性や社会的地位に対する執着は尋常ではありませんでした。私に施した教育も私にそれらを得てほしいという思いだったのかも知れません。だとするならば、この苗字は彼を見返すための旗印だったのでしょうか。いえ、それとも…。



「——ここは…」


 そこで、私は目を覚ましました。

 明るいとも薄暗いともいえぬ明度の中、視線を巡らせます。


「個室…ですね。お手洗いの…」


 …ああ、そうです。

 ホールの喧騒に辟易し、このお手洗いの個室に逃げ込んだのでしたね。

 どうやら、そのまま眠り込んでしまったようです。


 茫乎としていた意識が徐々に定まってきました。どうにか立ち上がり、私は個室を後にします。

 足取りは我ながら頼りないですが、なんとかお手洗いから出ることに成功しました。


 寝ぼけ眼でホールに戻ります。そのまましばらく呆けていたところ、やかましかった音楽が少し穏やかなものとなっていることに気が付きました。人の声も少なく、私は怪訝に思います。

 辺りを見回してみれば人気は比較的まばらで、五十人はいた客も今は二、三十人ほどなっていました。


「…なるほど。もうこんな時間ですか」


 どうやら、私はかなり眠り込んでいたようです。

 スマホを取り出し時計を見れば、夜も深まり日付を改め一時間ほど。

 約束の時刻も近いので身支度を整え出口に向かおうとしますと、ふと私はなじみ深い方々を見つけました。

 ヒロくんといつも一緒にいる、咲坂さんと臼野さん。その二人がそろって長テーブルに突っ伏し寝息を立てていました。その様子はなんだか微笑ましく、思わず口角も上がりましょう。

 周りを見れば、眠っているのは彼らだけではございません。


「おやおや」


 ソファで横になる彼は疲れた体を癒しに来たのか、穏やかな寝息を立てています。

 飲食を提供するカウンターでは、さきほど仲良く踊っていた男女が曲調穏やかになった音楽にうとうととしていました。


 場所にそぐわぬ珍しい方もいます。私が渇仰してやまない我らが生徒会長殿です。

 会長殿はソファに座り、俯くように眠っておりました。


「…」


 久しぶりに彼と話したいと思います。しかし、毎日頑張って働いている彼を起こすのも忍びないので、私は声を掛けずに横を通り過ぎました。


 クラブが閑散とするにはまだ少しばかり早い時間帯だとも感じましたが、学業に仕事…みなさま定めしお疲れなのでしょう。ご自愛なさって欲しいものですね。


「よう、帰るのか?」


 ホールを出て出口に向かう階段を上っていると、ヒロくんと鉢合わせました。


「はい、どうもヒロくん。この度はご招待いただき誠にありがとうございました。私はそろそろお暇させていただきます」


「なんだよ。せっかく三人そろってるんだから、一緒になんか楽しいことしようぜ」


「すみませんヒロくん。今日はちょっと約束があって…それはまた今度に」


「んだよぉ…。じゃ、またな…」


 口を尖らせ彼は階段を下りて行ってしまいました。

 私も彼らと一緒にいたいという思いもあるので、情緒纏綿として少々去り難いですが、意を決して足を上げます。


「お疲れ様です」


 階段を上りきると、受付のある部屋の前で黒服の方々がいらっしゃいましたので、一揖して部屋に入りました。

 受付のカウンターには誰も控えていません。流石にこんな時間ですからね。中に人はいますが、新しい来客は既に受け付けていないのでしょう。


「おや…」


 受付の前でうかうかしていると出入口の鉄扉が開き、一人のいかつい男性が目に飛び込んできます。

 その男性の後ろには、多くの人影がみえました。

 彼が部屋に入ってくると、数人の男性がぞろぞろと後につき、窮屈そうに出入口をくぐります。

 私は邪魔にならないよう壁際に身を寄せ、その様子を見ていたのですが…


「…ぁ、れ…?」


 その集団の一人…蒼く見える程、白皙の男性が壁際の私をみると声を上げました。

 僅かな声量だというのに、周りの男たちはその声に何事か、と足を止めます。


「戸田さん、どうしましたー?」


 集団の中でも若めの男性が声を上げた方に尋ねます。どうやら、この方は戸田というみたいです。

 なるほどこの方が…。


「このガキがなにか…?」


 今度はいかつい方が、私を見て言います。


「…や…なんでも、ない…」


 戸田と呼ばれた彼は私から視線を外すと、まるで何事もなかったかのように、男たちを引き連れて扉の奥へ行ってしまいました。


「ほっ…」


 ああも注目されると緊張いたしますね。

 開放感から私は胸をなでおろし、扉を開けて街へ出ました。


 さて、これから海端まで赴く用向きがあります。

 この機を逃すと、しばらくチャンスはないと聞きました。

 移動時間は恐らく一時間ばかり…急いでこの町を出なければなりません。


 ◇


 一つ仕事を終えた後、私は再び郷里であるこの町に戻ってきました。


「ではここで」


 代金を支払いタクシーから降りますと、清閑とした闇に取り残されます。

 ここは繁華街と私が通う学校の合間にある町はずれの河川敷でありました。


 こちらの方では街の喧騒は見る影もなく、遠目に見える繁華街の光が少々恋しいくらいです。

 ぽつぽつとたてられた街灯を頼りに少し歩けば、葉擦れの爽やかな音色と川のせせらぎが静夜を満たします。

 道行く右手に流れる黒き川の水面は、遠い街明かりをチカチカと照らし返していて、私はそれを眺めながら堤防の道をゆっくりと進みました。

 先ほど目にした黒々とした海とは違い、この光景は心に安らぎを与えてくれますね…。


 ほどなくして、土手を挟んだ左手の川裏に、櫛比する小規模の工場群が見えてきます。

 多くは市営のもので給水所や水に関する(排水や水の循環系だった気がします)大きな工場が続きますが、途中から様子が変わり民営らしき小さめの工場が立ち並ぶようになりました。

 父に聞いたところによるとその昔、ここらで大きな氾濫があり、その折に大分地価が下がったようです。この辺りに工場が多いのも、そういった背景が関係しているのでしょう。


 続いていた工場の並びも途切れ、合間に公園が挟まりその先には住宅が続きます。さらにその奥には橋が架かり、近くにはコンビニエンスストアがありました。


「えっと今の時刻は…」


 私は遠くのコンビニエンスストアを目の端に入れながら、再度時刻を確認しようとスマホを取り出します。最近、なにかと時刻を確認することが増えてきました。

 人と歩調を合わせる機会が増えましたから、自然とそうなるのでしょう。


「…おっと」


 スマホの画面が点きません。充電が切れてしまったのでしょうか。

 仕方がありませんので私はスマホをしまい、手に持っていた学生鞄をまさぐります。


「先ほどこちらに入れておいたはずですが…」


 おお、ありました。

 指先が冷たく硬質な物に触れ、そのまま表面をなぞるように指を走らせればざらざらとした感触が伝わります。

 鞄から手を引き抜き、広げてみれば、そこには目当ての物…腕時計があります。


 この腕時計は私が小学生の頃、誕生日に母がプレゼントしてくれた物です。

 とある事情により前面のガラスの中心から放射状に亀裂が入ってしまい、それ以来身に着けることはなかったのですが、最近ふとこの腕時計を用立てる機運があり、その後鞄に仕舞っておいたのでした。


 亀裂が入っているとはいえ、外周の時字と針の先はかろうじて見えますので、時刻を確認するのに問題はないのですが、今はこの暗闇です。少し離れたところにある街灯の光だけでは、時を読み取ることなど出来っこないとお思いになることでしょう。


「ですが、こんな時こそまさにこの時計の本領を発揮できるというもの」


 私はその腕時計を手首に着け、足を進めて街灯から更に離れます。するとどういうことでしょう。

 時計は仄かな明かりを帯びて、私の眼に時刻を映じました。

 そう、所謂夜光というやつです。

 鞄に仕舞っておいた為か蓄光が切れかけておりますが、スマホと違い、時刻を読むのに必要最低限の光量はまさに機能美。この暗さでも目立たずに済むので大変重宝します。


「四時二十分…まだ時間はありますね」


 小腹が空いてきたという事情もあり、私はコンビニまで足を延ばすことにしました。

 ついでなので適当に食料を買い込むとしましょうか。



「えーと…全部で14540円になります」

「はい、ではこれでおねがいします」


 …いささか買い込みすぎた気もしますね。

 一つの袋だとはちきれそうだったので、二つに分けてもらいそれを両手で持ち運びますが、既に手がしびれてまいりました。

 到底運べそうもないので、冷えた夜気に似合わぬ汗を滴らせながら、公園まであくせく移動します。


「はぁ~…」


 公園のベンチに座って、ようやく一息付けました。

 昼間は子供が集まり楽し気な声に満ちるこの場所も、今は皓々と澄み切った静寂が治め、ベンチの脇にぽつ然と灯る街路灯が心なしか温かいです。

 仕方ありません。ここで食事をすることにして、少しでも荷物を減らすとしましょう。


「ふむ…ここで一つ」


 日盛りに、伴う子供懐かしく、喧嘩囂躁反面と、夜更け満たすはしんと闇。

 されど抗う物もあろうか。

 寄る辺なる、孤灯奏でるコイル鳴き、あえかな光灯台に、闇に浮かべり一穂孤島。


「ふふふ」


 こんなところでしょうか。なるほど、夜の公園で晩餐というのも乙なものですね。

 私はビニール袋の中から、手頃そうなものを取り出し、封を開けます。

 ブリトーというものらしいです。レンジで一分と書いてありますが、問題ないでしょう。

 わざわざ温めなければ物を食べることが出来ぬというのは、世故の惑わしからなる思い込みと知ります。


 私はそのまま空気にさらされたブリトーに口をつけます。しかし…


「…おいしくないです」


 みなさんよくこんなものを食せますね。

 さもしい行為と思うのであまり食べ物に文句は言いたくないのですが、これはあんまりというものです。


「あれ、に…兄貴」


 どうしようかと手に持ったブリトーとにらめっこしていると、公園前の道のほうから声が聞こえました。

 首をひねってみれば、そこには若い男子が五人ほど並んで足を止めています。皆、覚えのある顔です。


成哉せいやくん、奇遇ですね。みなさんも、こんばんわ」


 その中でもっともなじみ深い先頭の男児に挨拶をして、続き他の方々にも頭を下げます。


「奇遇って…兄貴がアジトに呼んだんじゃん。今から行くとこなんだけど」


 私を兄貴と呼ぶこの子は、成哉くん。

 長井 成哉ながいせいやと言い、齢は私の二個下、今年中学三年生になった私の腹違いの弟です。

 普段は私を兄ちゃん、と呼んでくれる彼ですけれど、仲間の前だと面映ゆいのかぶっきらぼうに兄貴と呼び、その様子は大変微笑ましいです。


 あとは一つ下の妹(成哉くんのお姉ちゃんですね)が一人いるのですが、同じ学校に通っているというのに、まったく顔を合わせる機会がありません。しかし、彼女は私に似ず大変敏な子ですので、心配は無用でしょう。


「すみません、こんな夜更けに呼び出して…。私ももう少し早い時間帯にしたかったのですが、少々折が悪く…」


 彼らのような若い子たちを、こんな時間にまで付き合わせるというのは心苦しいものがあります。


「てかなにその服装…黒ずくめじゃん。不審者じゃん」

「あ…いえ、これはちょっと…」


 おっと、着替えるのを失念していました…。


「なんかすげー荷物持ってるし…」


 しかし、そこで私が持つパンパンに膨らんだビニール袋に上手く話が逸れてくれます。


「こちらはですね…皆さんに差し入れを持っていこうと思ったのですが、買い込みすぎてしまい…重くて」


 私の返答に、兄貴は馬鹿だなぁ、と成哉くんが破顔します。

 半分とはいえ血のつながった兄がこうも間抜けだと気落ちしそうなものですが、快活に笑い飛ばしてくれるその様に私は慰められました。


 ◇


 成哉くんたちに私も加わって六人で河川敷の方へ戻るように歩き、私たちのアジト(そう呼ぶのが洒落ているようです)に向かいます。


「みなさま、本当にありがとうございます。重くなったら私も代わるので、遠慮なくいってください」


 私が買い込みすぎた差し入れは、重くて持てない私の代わりに、成哉くんのお友達が手分けして運んでくれることになりました。

 弟にこんなお優しいお友達がいるというのは、兄としてなんと喜ばしきことでしょうか。


「いえ、大丈夫っす。俺ら仁さんのアジトを使わせてもらっているわけだし」

「え、アジトって仁さんのだったんだ」


 お友達の一人が驚いたようにいいます。


「いえ、あれは父から借りていて…、ですので私のものというわけでは」


「あ、そうなんスか、てっきり使われてない廃墟みたいなもんだと」


 実はその借りものというのが少々懸念材料なのですよね…。

 公共料金の類は私が支払っているので、いきなり取り上げられるという可能性は低そうですが…それもどう転ぶものか…。私の今の大きな関心事の一つです。


「成哉も頼めば家一個ぐらいくれるんじゃねーの? 金持ちなんだろ? 一人暮らししたいっていってたじゃん」

「おれじゃ無理無理、絶対相手してくれねーよ。兄貴たちの要求はすぐ呑む癖にあのクソオヤジ…」


「ふふ…」


 成哉くんは憎まれ口をたたきますが、私の知る限り父との仲は良好なので本心ではないでしょう。


 成哉君たちが楽しく談笑しているのを眺めていたら、道中退屈することもなくあっという間に時は過ぎ、

 歩く土手からは再び並び行く工場が見えてきます。そろそろ目的地に着く頃合いでしょう。

 アジトは先ほど前を通りかかった工場群、その末尾に坐しているのです。


 私たちは草の茂るのり面を降りて川裏へ出ます。そして車道を超え少し奥へ歩けば、そこはもう我々のアジトです。

 敷地の半分を割るように、広々と今は形骸化した駐車場が目の前に広がります。端から端まで五十メートル走をゆうにできるでしょう。そして、敷地を割ったもう半分には、切妻屋根の大きな倉庫が四つほど連結したように隙間なく立ち並んでおりました。

 黒ずんだ雨染みの目立つこの大きな倉庫は、屋根で区切ると四つに別れているように見えますが、実は中で繋がっています。前面の真ん中には、背が高く大きな金属製の引き戸が取り付けられていて、その取っ手の下には小さく鍵穴がありました。


「たぶん、鍵あいてんじゃね」


 私が自身の懐を探り鍵を取り出そうとすると、お友達の一人が言いながら金属の引き戸を引いてくれました。

 すると扉は徐々に動き、微かな隙間が生まれて、ゴロゴロと戸車が扉の重さに見合った振動を伝えます。

 やがて出来た隙間からは明かりが零れ差し、ついには我々を取り巻く夜闇を払いました。


「集まりは悪くないですね」


 中に立ち入り、ざっと様子を見ます。

 私の目の前には、まるで学校の体育館のような、広々とした空間が広がっていました。

 いえ、天井は私の通う学校の体育館より低いですね。しかし、がらりとひらけた内部には現実感が薄れ、視線がぼうっと泳ぎます。


 私の父が買い取る以前には、小規模ながらも、ここで車両のパーツの設計、製造がされていたらしいです。

 ですので、本来、倉庫というより工場といった方が適切かもしれませんが、この場所を工場たらしめていた設備はいまは無く、ただただ空間が続きます。


 そして、設備と取って代わるように空いたスペースを埋めんとするのは、少壮気鋭な若人達。

 どこぞから拾ってきたのでしょうか、長椅子などを持ち込み座って仲間と駄弁る方々、毛布に身をくるみ床に寝付く方々、果てやテレビを備えてゲームに高じている方もいます。

 電気は通してあるので冷蔵庫やレンジ、冬の名残を感じさせる電気ストーブなどもありました。


 それらはおおよそ、ここにいる彼らが持ち込んだものです。私が彼らに与えたのはそれこそ場所と電気ぐらいでしょうか。みな成哉くんと同じ年頃で、彼らは家や学校に居場所がなかったりと、様々な事情にて腰を落ち着けるところを求めています。二か月ほど前に、私はそれを叶えようとこの場を設けたのでした。


 そのことを恩に着て私に懇意にしてくれる方々もいますが、まったく意に介した様子なくこの場所を利用する方もいます。本日も、初めて見る方が何人か見えました。


「なかなか順調に増えていますね」


 今、この場にいるのは三十人足らずでしょうか、時間帯を考えれば上出来でしょう。


「うん、兄貴に言われた通り見境なしに声かけてっからさ。でもその分問題あるやつも多くて、やんなっちゃうよ」


「なにか問題事があったのですか?」


「まあただ喧嘩っ早いだけとかならいいんだけど。この前のやつなんかここで仲間募って空き巣企んでてさ、流石にやべーと思ったから追放しといたけど…」


「そうですか…それは助かりました。ありがとうございます」


 芋づる式にこの場所が警察にバレて、問題にでもなったらたまりません。

 人数も集まってきたので、そろそろ無作為に誘うのはやめた方がいいかもしれませんね。


「すみません。あそこまでお願いできますか」


「うっす」


 私たちは倉庫の中心から少し壁際に寄った所に置かれた冷蔵庫へと向かいます。

 この冷蔵庫はかなり大きく、誰がそうと決めたのかここにいるみんなの共用とされていました。

 そもそも誰が持ち込んだものなのかも判然としていませんが、いつの間にかそれがここの通念となっています。


 ここにいる者たちはあらかたグループで集っていて、大体三、四人の規模で分かれています。

 そして学校などの例に洩れず、同じ空間を共にしているというのにグループ外の方々とは疎遠です(もちろん交流は人によりけり、濃淡がありますけども…)。ですが、共用とされているものをもし私物化せんとする者がいたら、普段は没交渉の彼らも団結してその者を排斥しようと動くでしょう。一見無秩序に思えるこの場所にも、一種の秩序があるのです。


「あー重かった…腕外れそうだったもん」

「お前、軟弱すぎな」


 私の差し入れを運んでくれていた成哉くんのお友達が、冷蔵庫の前に差し入れを置き、皆で手分けして少しずつ中へと入れていきます。


「あっ」


 お友達の手が封の開いたブリトーを掴んだ所で、私は声をあげました。

 先ほどは結局食べ切れず、後で食べようと袋に戻したのをすっかり忘れていました。


「すみません。それは食べかけで…」


 流石に一度口をつけたものを差し入れとして置くのは不品行と思いますので、私はお友達からそれを受け取ります。ですが、おいしくないのですよね、これ…。


「むぅ…」


 男児たるもの忍耐が肝要と、我慢して頬張りますが、やはりおいしくなくて苦悶の声が漏れます。


「仁さん、それ冷たいまんまッスけど、いいんスか? 温めた方が美味いと思うけど」


「…ええ。そんなものは大人たちが勝手に決めたルールです。悪しき遺風に惑わされぬよう気を付けなくては」


 私がそう答えブリトーをかじると、お友達がおおっ、と感心した声を上げます。


「やっぱり仁さんは気合入ってんなぁ」

「現代に残った最後の硬派だ…」

「流石ッスね。ひょっとして、成哉もそのまま食べる感じ?」


「んなっ…、なわけねーだろっ!」


 成哉くんが顔を赤くして怒鳴りました。

 いきなりどうしたのでしょうか、と我が弟の動向を見張っていると、彼は私の方に身を寄せてきます。


「に、兄ちゃんちょっとさぁ、恥ずかしいからやめてよ…すぐそこにレンジあるんだから素直にさ…」


「やめるって、なにをですか?」


 小声で耳打ちして来た弟の言葉が呑み込めず、つい目を丸くします。


「仁さんって、もしかしてカップ麺にもお湯いれなかったり?」


「そうですね。お湯を入れなければならないというのも歪んだ世故でしょう。この社会には無責任な正しさが蔓延っていますが、本当に正しいことというのは、私たち自身が各々見つけないとならぬのですよ」


「「おお~」」


 再びお友達が問いを投げかけてきたので真摯に答えますと、またしても感嘆の声が重なります。

 私の言にこうも関心頂けると、ありがたくも少々気恥ずかしいですね…。


「この…っ」


「ああっ、なにするのですか成哉くん…!」


 照れくさくて空いている手で頬を掻いていたら突然、隣にいた成哉くんが反対の手からブリトーを引ったくり、冷蔵庫の脇に置かれたレンジに無造作に投げ入れると、タイマーのつまみをクイっと捻ります。


「馬鹿兄貴っ、ベビースターでも食ってろっ!」


 レンジがブーンと低い音を鳴らす中、捨て台詞を吐いて成哉くんは肩を怒らせ行ってしまいました。


「さーせん仁さん、成哉あっち行っちゃったんで、俺たちも行きますね」


「…はい…」


 呆然と、彼らの背中を見送ります。


 どうして、成哉くんはいきなり怒り出したのでしょう…。

 私のような愚鈍な兄は嫌になったのでしょうか…やはり、私のような者では兄は務まらないのですか…。


 成哉くんと初めて会った時のこと思い出します。それは私が小学二年生だった時のことでした。

 いつものように放課後、友達三人と公園で遊んでいた所へ、我が父が彼を連れてやってきたのでした。

 始めはおどおどとして引っ込み思案な彼でしたが、私の友達の助力もあり、すぐに打ち解けることが出来ました。彼は私を兄ちゃんと呼んでくれました…。久しぶりに顔を合わせても屈託のない笑顔で迎えてくれて…。

 ああ、成哉くん…。私のたった一人の弟…。

 天を仰ぎ、潺湲と心の中で涙を降らしました。

 心の雨のなか佇んでいると、ふとチーンという音が意識を現実に戻します。


「…そうでした。私にはやらねばならぬことがあるのです」


 そのためにわざわざ、成哉くんも呼び出したのでした。正直時間帯を考えると折がよくないですが、しかし、早いに越したことはないでしょう。

 レンジから温まったブリトーを取り出し、口にします。


「これはおいしいですね…!」


 なるほど、怒ったわけはこれですか。世の慣わしも頭ごなしに否定してはなりませんね。



「うっ…食べ過ぎました」


 その後、私は自身の差し入れをつまんで腹を満たし、現在は壁に背を凭れ食休みにあずかっていました。やるべきことがあるので休んでいる場合ではないのですが、いかんせん腹が重たく…。

 休んでいる間することもありませんので、ぽけーっと天井の照明を眺めていますと、ふと二人の少年がこちらに向かってきていることに気が付きます。


「仁さん」


 そのまま声をかけてきたのはメガネをした小柄な少年です。その後ろには控えるように、年齢を鑑みると随分背の高い少年がついています。


「おや、コウくんにシンくん。今日もお揃いで」


 小柄でメガネを掛けている方がコウくんで、背が高い方がシンくんと言います。彼らはいつもつるんでいる仲良しで、二人とも私に良くしてくれるいい子たちです。なのですが、シンくんは先ほどから黙りこくっており、なんだか様子がおかしい気もいたします。


「さっき、あの吉矢広と喧嘩してきたんですよ」


「ほう、ヒロくんと…」


 私の訝しんだ目線に気づいたのかコウくんがそう答えます。

 確かにシンくんの顔を見れば、まぶたや唇には傷があり、腫れぼったく赤らんでいました。コウくんの言葉に、彼も悔しそうに顔を歪ませます。


「仁さんの予想通り、ボロ負けでしたけどね…」


「そうでしょうね…。私には、彼に喧嘩で勝てる人なんて思いつきません…」


 シンくんも中学生の間では喧嘩自慢として有名とのことですが今回に限っては相手が悪いでしょう。

 私は荒事はからっきしですので当を得てるかわかりませんが、ヒロくんを負かすことが出来そうな人なんてそれこそ…。


「別に、次やったら勝てるけどな…」


「あんだけボコボコにされて何言ってるんだよ。歯も取れてたじゃん」


 ぶつくさと呟いたシン君に、コウ君が聞き咎めます。

 しかし、歯が取れてしまったとは…ヒロ君も大人げないですね。


「シン君、歯が取れてしまったのなら、歯医者さんにいきましょう」


「いや、乳歯だったんで…」


「ああ、そうだったんですか」


「嘘つけよ。俺ら中三だぞ…乳歯なんてとっくに生え変わってるだろ」


「まじまじ…一本なんか全然抜けなかったやつがあったの」


 そのまま二人と雑談を続けます。

 特にシン君は口数の少ないながらもきちんと応答してくれて、大分私に心を開いてきてくれていると実感しました。


 やがて話も下火になると、気を取り直す様にコウ君が咳ばらいを一つつきました。


「仁さん、成哉から聞きましたよ。例の話、今日やるつもりですか?」


「…ええ。なるべく早めに動きたいので」


「わかりました。じゃあこの前話した通りにしますね」


「ありがとうございます。お願いします」


 私が頭を下げると、二人も軽く会釈をしてから身を翻します。しかし、そのままその背中を見送っていた所、ふいにコウくんが足を止めこちらを振り返りました。


「どうかしましたか?」


「…仁さんは、吉矢広と知り合いなんですよね」


 なにかを考えるように、コウ君が視線を落とします。その目を覆うメガネのレンズが、ちょうど天井の照明を照り返し、表情がよく見えません。


「あの、インって人、知ってますか…?」


 コウ君がじっとこちらを見据えるように顔を動かせば、メガネに反射していた光が振り切れ、目と目があいました。


「イン…ですか? 聞いたことありませんね」


 人の名前らしいですが、はてそれは姓か名か。はたまたあだ名のようなものなのか。

 本名だとしたらひょっとして中国系の方でしょうか? 本当にそういう名づけがあるのかも知りませんが…。いずれにしても、そのような名前の人に覚えはありません。


「その方がなにか…?」


「いや、知らないんなら大丈夫です。ちょっと気になっただけなんで…」


「はあ、そうですか」


 そう言われてもなんだか興味が尾を引き、詳しく尋ねてみようかとも考えましたが、そう思ったときにはもう遅く、彼らの背中は既に遠くなっていました。


「まあ、また今度聞けばいいでしょう。それよりも今は…」


 腹の具合も大分楽になってきましたし、休日だからか朝方になって人も増えてきました。

 それでは、そろそろ準備を始めましょうか。


 ◇


『みなさま、この度はお集まりいただき、誠にありがとうございます』


 手に持ったマイクに向かって喋れば、私の足元にあるスピーカーから拡大された音となって発せられました。

 アジトに集まった若人の視線が、瞬時にこちらへ向きます。私が今立っている場所と最も離れた角に寄りかかる方にも聞こえているようなので、音量もちょうど良さそうです。

 厚かましくも近所迷惑を恐れず、音量の設定に凝った甲斐がありました。


『私はここの所有者である長井仁と申します。以後お見知りおきをよろしくお願いいたします』


「なんだアイツ…うるせぇなぁ」

「いつも差し入れしてる人だ」

「あれ、成哉の兄貴じゃん」


 毛布をかぶり寝入っていた方々も徐々に起き始めます。

 もう朝といっていい時間帯ですので、しゃきっとしていただきましょう。寝入ったばかりの方には悪いですが。


『既にお察しの方もございますよう、私はこの場を開いた張本人です。皆がアジトと呼ぶこの倉庫も、私が用意したものであります』


 私を耳障りそうに睨んでいた彼らの瞳に、動揺が浮かびます。

 この場を有意義に使っている方たちは、私に弱みを握られているようなものですからね。

 そんな奴がいきなりをなにを言い出そうとしているのだと、一部の方たちは固唾をのみました。

 とはいえ、関心がない方も多く、ぽかんとした表情もみられます。


 …よし、ではここらで勢い強めに行きましょうか。

 今のところ父に恨みはないのですが、共感を得られるかもしれませんので、少しダシとして利用させてもらいましょう。


『私は物心つく前に、父に捨てられました。母の腹にいた私の存在を都合よく利用され、生まれた瞬間、私は捨てられたのです』


 一息、深く吸います。


『我々は利用されています。大人たちから散々利用された挙句、家や学校からは爪弾きにされ、逃げた先の街では年齢を理由に搾取されています。働くのも一苦労。住む部屋も借りれず、酒や煙草を手にするのも楽ではありません。チーマーや半グレには頭を下げ、割高な薬物を買わせられ、しかし彼らは年齢を理由に決して仲間には入れてくれない…』


 ようやく、私の話に耳を向ける人が増えてきました。

 とはいえ、全体の二割に満たないでしょうが、しかしこれで十分と言えましょう。


『何故そんな扱いを受けるのか。それは弱いからです。社会的にも、肉体的にも、精神的にも。様々なものに縛せられ、自由が利かぬからです』


 大仰に手を振り、熱を込めます。


『となれば、我らはどうすればいいのか…それは簡単なことです。その縛りを壊しましょう。

 我々の持ちうる物を利用して、わが身を縛する枷を外す…この場を見てください。

 居場所のない我らが集うこのアジトは、私が父から手に入れた…父を利用した結果得た、縛りから逃れた場所です』


 聴衆との温度差を埋めるように、彼らに熱を伝えるように、ゆっくりと。


『今度は私たちが利用しましょう。我らが持ちうる武器を持って、縛りを断ち切りましょう。

 何も成し遂げず、虎の威を借るだけのチーマー。かつての栄光に縋りつき、未だ我が物顔で街を歩く元暴力団員…。我らの足元を見てクスリを捌く、半グレ集団…ドラジット。

 彼らを下し、金も、場所も、酒や煙草、ドラッグも、我らが手にするのです。そのために私は——』


 一度だけ、おもむろにまばたきをして間を置きました。


『——ここに、チームを…を結成いたします。この冷たく暗い社会の底で、沈澱した蠢く澱。

 そんな我らが数、あるいは結束という武器を持つとどうなるか。それを今、ここから形にして見せましょう』


 そう言い切ると辺りは静寂に包まれ、まるで世界が停止したような感覚に陥ります。

 彼らをゆっくりと見回せば、冷たい視線の中に、ほんのいくつか熱のこもった瞳を見つけました。

 私の心情的にも、少し熱意が足りませんでしたか…まあ、私の弁舌じゃこんなものでしょう。

 では、もっと分かりやすいもので揺さぶりますか。


『私と共に来るという方は、ここに集ってください。もちろん参加は強制ではありませんので、参加しない方々も今まで通り、アジトの利用はご自由に』


「…いや、さ。行くはなくね…流石に」

「クスリやってんだろ…」

「馬鹿、聞こえるって…」


 私の合図を聞いて、立ち上がる人影がいくつかこちらに来ます。


「兄貴ぃ、なんか全然受けてないけど、大丈夫かよ~」


「まあ見ていてください。これからです」


 マイクを切って、こちらに来た成哉くんに答えます。その後ろには何人か彼のお友達がついて来てくれていました。まあ、予め頼んでいたのですけどね。サクラというわけです。


「お、成哉たち行ってるじゃん」

「兄弟なんだしそりゃそうだろ」

「成哉がいるんなら俺も行ってみよっかな、やることなくて暇だし…」

「えー、ダルくね?」


 成哉君が私の元に来たのを契機に、肯定的な声も少しずつ聞こえてきました。成哉君は彼らの間でもかなり評判が良いみたいで、兄としては誇らしい限りです。

 チームの結成表明も彼に任せればもっとスムーズにいったでしょうが、これは私がやらねばならないことですからね。弟とはいえ任せることはできません。


「仁さん、約束通り来ましたよ」


「コウ君とシン君も。ありがとうございます」


 コウ君とシン君も二人そろって来てくれました。

 彼らも有名人ですので、これを見ていい影響が出てくれるとありがたいのですが…。


「おい、三中のシンも行ってるぞ」「マジで? あいつ人の下につくの嫌いだろ?」

「顔ボコボコだし、あの仁ってやつにボコられたんじゃね?」

「シンをボコるって、あの仁って人強えのか…見かけによらねぇな…」

「俺行ってみよ、あの人いつも差し入れしてるから優しそうだし」


 なんだか予期していない反響もありますが、まあプラスに働きそうなので良しとしましょう。


『では皆さんこちらに並んでください』


 サクラじゃない方も数人か集ってきてくれました。

 私は彼らを一列に並べ、先頭の対面へと移動します。

 さて、それでは最後の一押しと行きましょう。


『言い忘れておりましたが、これはお遊びではありません。ここに署名しチームに入った暁には手付金として一万円。その後もチームの貢献度に応じて報酬を支払う所存です』


「入るだけで一万くれんの? 行くしかなくね?」

「別にうざくなったらここに来なきゃいいしな」


 鶴の一声でしょうか。私がそう言い放った途端、ぞろぞろと人が並び始めました。

 しかし彼らの目には少なからずの嘲りが見えます。


 おそらく、金だけ貰ってあとは知らんぷり、最悪アジトに顔を出さなきゃいいと思っているのでしょう。

 ですが彼らに、ここ以外の居場所があるのでしょうか。


 当座の目標はこのアジトの中、まずはチームに入っていないものを少数派に、その後チームに貢献せぬものが軽んじられる空気を作り出すことです。それが為されたとき、居場所のない彼らはこの空間を手放したく無いと躍起になってくれることでしょう。


「ふぅ…」


 ようやく配り終えました。占めて二十五人ですか。先ほどアジトにいた三分の二くらいの人数です。

 署名が大分ハードルを高くしてしまったかもしれませんね。

 とはいえ、ここは人の入れ替わりが激しいので管理するためには省けないのですが…。


「兄ちゃん、財布大丈夫? いくら払ったの?」


「二十五万円ですね」


 既にチームに入った方たちは他方に散らばり(一万円を持って足早に街へ出たものもいます)、一人署名を整理していた私に成哉くんが声をかけてきました。


「にじゅうご…良いグラボ買えんじゃん…。つうか、俺とかアイツらにまで配んなくて良かったのに。返す様に言おうか?」


「いえいえ。まだ大分余裕があるので大丈夫です。それは私からのお小遣いだと思っていてください」


 弟の気遣いに心が温まり、疲れも吹き飛ぶようです。

 それにこれは必要経費ですからね。いまはムダ金でも後々効いてくるはずです。


「やっぱさぁ、チーム名がダサいのが良くなかったんじゃない? なに、沈澱党って」


「え、ダサいですか…? 馴染みやすいように、有名な作品から引用したのですが…」


 日本で一番読まれている作品と思っていたのですが、あんまり受けは良くなかったようです。

 まあほんのちょっと古いですからね。若者には合いませんか。


「…んで、あのさ…、結局兄ちゃんは何したいの? そんな大金まで払って…さっき言ったようにオヤジに怨みがあって復讐したい、とかじゃないべ?」


 軽やかな声色ながら、どこか神妙さを滲ませ私に問います。


 それに答え、私も動機を明かしたくなりましたが…しかし、そうしたところで理解は得られないでしょう。


 …この私でさえ、理解などできていないのですから。


「…成哉君の言う通り、私にそう言った積怨があるわけではありません。ただ、この街でやり残したことがある…そんな気がするのです」


 いつか見たような純粋な瞳にいたたまれなくなり、天井を仰いで答えました。


 私が為さねばならぬこと。

 恥ずかしくも生を偸む、残りかすの私が最後に為さねばならぬ…なにか。

 それは未だはっきりとは形を成していない。ただ、渦巻いていて…私を突き動かしている…。

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