第12編 スターアイスクリーム

1 スターアイスクリーム


真夜中一人、コーンカップを手に取って、頭上に並ぶフレーバー。バニラ風味の星雲とミントが香る銀河系、赤色巨星を散りばめる。



2 海と亀


透き通った青い海、どこまでも蒼い海の中、自由自在に亀が飛ぶ。流れを切って急旋回、陽光目掛けて急上昇。広がる空に着地する。



3 花火


花火パックを買ってきた。色とりどりの花火が並びどれからにするか悩ましい。ふと思いつきマッチを3本、擦ってみる。後悔なんてどこにもない。



4 月の石


暇つぶしに散歩へ出る。エアロックを抜け出ると、灰の大地と青い地球。一歩踏み出す足元に小石が一つ、引っかかる。



5 甘納豆


昔々のお話で、甘納豆なる菓子を知る。冷蔵庫をあけ放ち納豆一つを手に取って、シュガーと一緒にかき混ぜる。記憶はここで途切れてる。



6 電子辞書


電子辞書を携える。語学の知識が手のひらサイズ。友の机の積み上げを笑っていたのがついさっき。笑われてるのが今自分。



7 かたつむり


雨が止まない昼下がり、手すりをゆっくりひたすら進んでいく。突き出た角は一本だけ。こちらも負けじとファンサを返す。



8 ランチ


腹の中は空っぽだ。気持ちはとうに浮いていて、体も多分宙を舞う。風に逆らい目についた初めての店に飛び込むと、誘導通りに着陸する。



9 少女が一人


目の前に少女が一人道を行く。物悲し気なその背中、気になり声を駆け寄るとふっと姿は消えていて、靴を濡らす水たまり。



10 スパルタン


テルモピュライに陣取って、無数の敵に身構える。力の点にすべてを込めて、最後に一息吐き出した。これが我が社の全力だ。

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