第11編 パスタ

1 ラインハルト光子線


瞼を閉じた先の世界。広がる闇と光の空間を必死に進むそのわけは、何かを見たいという衝動。焼け付く光の残滓を前に新たな言葉を紡ぎだす。



2 パスタ


地獄の門へとたどり着き、吠える三つ首、うなる俺。力任せに首を掴み無理やり体を引き回し、糸引く霊魂、渦を巻く。



3 ハーモニカ


吹けもしない小さな音色を忍ばせて、一人辺りを散歩する。世界のすべてが五感を襲い脳裏に浮かぶ一調べ。無音と無念の演奏会。



4 スペースシャトル


天に上る白い筋。点より来る黒い点。はるか昔に消え去った夢の続きの願いを込めて、弓を構えて矢をつがえる。



5 無題


心の赴くそのままに言葉と文字を書き上げる。声なき声が心を読み上げ、しかし鼓膜は冷徹で、はひたすら無音と記憶する。



6 踏切


降りるバーと警告音。私が留まるこちら側。隔てた未知の向こう側。指につながる糸を踏み、擦り付けると擦り切れた。



7 蛍光灯


端が黒ずむ白い線。ちかちか瞬く灰の線。取り出していく乳の線。蛍の光はまだ早い。



8 青信号


緑を青と呼ぶ社会。進め進めの言葉のままに一歩一歩を踏み出して、行き着く先は赤点滅。息を吐き、けれども歩みは止まらない。



9 千羽鶴


何もできない病室で一人孤独に横たわる。両手は動き、指もそう。鶴を一羽呼び出すと、控えの視線が突き刺さる。



10 マスク


狂乱が過ぎ去りし今日この頃、誰もが口をさらけ出す。伸ばした髭に別れを告げて、肌と踊る曲名はラプソティーとしておきます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る