第10編 アンテナ

1 岩の音


ごろごろしている岩の中、水が跳ね、水を打ち、広がる世界は海王星、閉じた世界は小惑星。



2 麦わら帽子


日差しが向きを変える頃、刃を重ね刃を開く。緑が茶に変わる頃、風の波に乗って行く。



3 アクリルスタンド


見てはいけない角度を知る。微笑む世界は裏面で、無我の世界が楽屋裏。縦に境に世界を見る。



4 曇り空


雨の降らない曇り空。空に広がるハとエの歌。何も降らない空気感。しかし何かが降りそそぐ。



5 アンテナ


あの空めがけて突き上げる、伸縮性の指し棒は銀に煌めく波乗り板。波のうねりに身を委ね、ブルーブラックの海を行く。



6 リチウムイオン


詰みあがったバッテリー、手も出せず足も出せずに目を閉じる。私は無心で炭を撫でる。



7 歯ブラシ


乳白色を抉り出す繊維の群れと赤い川、滝が落ち、豪雨の飲まれた石灰岩。



8 天を駆ける


 マグロの未来を占うと、まとわりつくのはオスが1、食われたイクラの残骸を押しのけ3尾が泳ぎ寄る。



9 フラッシュバック


飛び込む閃光、慄く当方、心が先に踏み引く後方、照らし出された心が咆哮、落ちる影が何もかもをじわじわといたぶる。



10 うさぎ


取引を持ち掛けられた私の手には、赤染刃が一本ある。ニタニタ笑う不快な笑顔を今朝斬りに。受け入れて茶会の支度を整える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る