第5編 手紙

1 水飴


確かに透き通っているけれど、周りをぐにゃりと捻じ曲げる。

容器に入っているときはおとなしくしているのに、ちょっと取り出すと何もかもがねじ曲がる。


割り箸を突っ込んでかき回す。

ちょっと取り出してこねる。


薄っすら色味が付いていく。

飴色、なんて、たまに聞くが、なるほど、こういうものなのか。


口に含むと純粋な甘さだけが口の中に広がる。


口元がぐにゃりと曲がる。




2 手紙


誰かから来た手紙をあけた。

無地の白紙で、折り目の他は何もない。


一行目を読んでみる。

そこには毎日の暮らしが綴られていた。

写真が数枚添えられていた。


二行目を読んでみる。

そこには家族のことが綴られていた。

写真が何枚も添えられていた。


三行目を読んでみる。

そこには何も書かれていない。

一人一人の写真が添えられていた。


ふと、写真が微笑んだような気がした。

手紙を折りたたむ。


続きを書こう。



(白紙が一枚、宙を舞う。

 ガラスに映るその顔を、瞳にしっかり焼き付ける)

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