ガラ王者と古の石〜戦乱の故郷〜

東京クジラ

第1話

『イエル、、、逃げろ。、、

逃げて、

逃げて、

逃げれば、

きっと、、、、君と、、お腹の子供は、、、、、、、、助、、カ、、ル。』

『いや、、、いやです。、、

ねぇ、

サテス、、サテスッッ、、、』

『イヤーーーーーーー!!!!!!!!!!!!』



第1章〜戦乱の始まり〜

その昔、

地球には、5つの種族がいたという。

水を操り、守る水族。

土、砂、を自在に操り、大地を守る地族。

空と共に生き、風を操り、守る風族。

これらの魔法を操る者たちは自然族と呼ばれていた。

かつてはその中に、『魔族』と呼ばれる者たちも存在した。

魔族は、自然族が操る自然魔法は使えないものの、瞬間的にその場所から移動する移動魔法、物に呪文を書き発動する文様魔法、その他にもエネルギーを操る沢山の魔法を使う事ができる種族だった。その代わりに魔族は多くの種族と心を寄り添い、ともにしていた。

魔族の中には破ってはならない掟があった。

それは、他の種族より多くの魔法を使えるからこそ、自分達の欲望の為には使わないというものだった。

もちろんその頃にも、魔法を使えない種族もいた。人族、すなわち、人間だ。

彼らは、優れた魔力こそ無いものの、他の種族よりも、考える力が優れていて、感情が豊かだった。他族もまた、その人族を受け入れ、共に尊敬し、生きていた。


だが、人族には、魔法に対する強欲があり、嫉妬深い者もいた。そのもの達は、全ての魔法を羨み、力ずくで、魔力を奪おうとした。

その矛先は徐々に、最も魔法に恵まれた魔族だけに向いていった。巧みな話術で自然魔法を使う自然族を騙し、自然族も何故自分達は、自然の魔法しか使えないのだ。

なぜ魔族だけが魔力の高い紋様魔法や移動魔法のような最高峰魔法を使えるのだ。

と、羨んでいくうちに、自分達が扱える自然魔法への誇りを無くしていった。

そんな哀れな考えが人族と自然族を結んでしまい、ついには両族は魔族を破ろうと、同盟を結んだ。

その為の兵器として、自然族は自然の力を使い強靭な魔力の石をつくり、人族は優れた技術でその自然族の魔力を閉じ込めるよう、石を細工した。

こうして自然族と人族が魔族と対立し始め、100年がすぎた頃、遂に魔族と人族は戦争を起こした。

魔族にはイエルという王女。自然族には反逆者隊のギャラスがいた。イエルは幼い頃、母を流行病で亡くし、父は自然族や人族に交渉を申し出て、行ったきり、帰ってこなくなった。

この時、イエルは王座を継いだ。

まだ15歳だった。

イエルは魔族の為。故郷のために、戦った。

だが、いつしか、イエルは生きる気力を無くしていった。戦場に戦士達を送っては、消えていく命を目の当たりにすると、自分は王座に座る必要があるのか、なんのために戦い、なんのために生きているのかがわからなくなっていった。

戦場へ友を送り出し、連絡が途絶えた時からイエルは何も喋らなくなった。

そこで、少しでも日々の辛さを忘れる為に、癒しを求めた。

本で学んだ魔法の文様を灰色の冷えきった城の床になぞり、『いつでも虹の見える魔法の丘』という場所へ移動魔法で移動した。

普通の移動魔法は唱えるだけで移動が可能だが、この『魔法の丘』は文様魔法が必要な上に強力な魔力の結界が貼られている為、魔力の強い王族だけが入れる場所だ。

イエルにとっては鍵付きの庭のようなものだった。

文様を使ってでないと行けない場所だったら、自然族もこないだろう。そこはイエルの住む城からは遠く離れた丘。ここなら、と思っての事だった。

『やぁ!』

背後から見知らぬ声がした。

『!?だ、誰ですか!?』

『それは、今こっちが聞きたかったんだよ』少年はあどけなく笑った。

少年はサテスと名乗った。

サテスは金髪に作業着という姿で現れた。

イエルにとっては変な格好だった。

『サテス…さん?なぜここに来れたの?』

『んー、、考え事をしてて、どこかの階段を登ったような…わかんないけど、フラフラしてたらここに着いた』

彼は照れ臭そうに笑った。

イエルはそんなサテスになぜか、少しずつ心を許していった。

だが実は、サテスは魔族を嫌う反逆隊隊長、ギャラスの息子であった。

2人は、お互いの立場を隠し、サテスも昼は戦いに駆り出され、夜になると虹の見える魔法の丘に登るようになった。

サテスはイエルに色んな話をした。

『イエルはお嬢様なんだな、言葉使いが、なんだろう、、ふわふわしてる感じが、、。』

『そう?じゃあ、あなたの真似をしようかしら。』

『ダメだよ、俺の真似しちゃ。俺の言葉遣いは汚いから。。、俺が君の真似をするよ!』

『あら?じゃあやってみてくださる?』

『こ、、こんなかんじですわ?』

『!プッククク面白いわねサテスってフフッ』

『アハハハハ、イエル!この!笑ったな!?』

2人は虹の中走り回った。

サテスは楽しかった。戦場での苦しみもイエルと会えば少しの間、忘れられた。

15の少女と16の少年は、夢を語り合った。

お互いに自分の素性を明かさずに

2人は恋に落ちていった。

それは、純粋な恋だった。

それから5年がたち、イエルは20、サテスは21、大人になっても、サテスとイエルは毎晩、虹の見える丘に登り、お互いの温もりに癒された。

その後、2人は子供を授かった。

イエルは、すぐに鳥の使いをやり、サテスに知らせた。

サテスは、嬉しさのあまり、鎧を着たまま虹の見える丘へかけ登ってしまった。

だが、イエルは薄々分かっていた。サテスがあの、ギャラスの息子であることを、、、そしてサテスもイエルが王女であることは勘づいていた。

だから、イエルは反逆隊の紋章が着いた鎧に何も言わなかった。

2人はまだ小さいお腹の子供にガラフォデスという名前を付けた。






第2章〜愛と共に〜

その頃、両族の戦いは白熱し、どちらの首を取るかという卑劣な争いにまで発展していた。

そして戦火は遂にイエルの住む城下まで辿り着いてしまった。

サテスは、イエルを守るため、仲間に何度も説得を試みた。しかし、その度に仲間はサテスを裏切り者として扱い、時には拷問も受けた。

ギャラスは城の中まで攻め入り、

ついにイエルのいる寝室に入った。

サテスはイエルを庇った。

『俺たちは民を守るために戦っている、攻め入って、罪のない人を殺めるためではない!!!!』

サテスは力の限り、叫んだ。だが、

『ひとつ言っておこう、、そいつは人では無い!!!!

そして戦力にならないお前になど用はない!!!!』

ギャラスはサテスを息子とは思っていなかった。

サテスは同盟の際に人族と自然族の血縁関係を結ぶ為に生まれた子供だったが、人族の愛人の息子という事もあり、魔法を全く使えなかったからだ。

ギャラスは魔族を庇った息子に剣を振りかざした。

『やめてーー!!!!』

イエルは叫んだ。

彼女は魔法を使おうとしたが、魔族は妊娠中お腹の子供の為に魔力を使う為、防ぐことが出来なかった。

城中に鈍い音が響き、サテスは胸に致命傷を負った。

イエルはサテスを抱き寄せ、涙を零した。

『イエル、、、逃げろ。、、

逃げて、

逃げて、

逃げれば、

きっと、、、、君と、、お腹の子供は、、、、、、、、助、、カ、、ル。』

その言葉を最後にサテスは、

イエルを庇い無念の死を遂げた。

『いや、、、いやです。、、

ねぇ、

サテス、、サテスッッ、、、』

『イヤーーーーーーー!!!!!!!!!!!!』

イエルはその場で泣き叫んだ。

その隙をつき、ギャラスはイエルの魔力を石に封じ込めた。

魔力が一気に無くなった影響で、イエルの体に力が入らなくなった。

そして、ギャラスが襲いかかろうとした時、

イエルは唇を噛み締め、声を絞り出した。

『ギャラス、、、この子だけはあんたに渡さない』

イエルは残り少ない魔力で床に紋章を書き、文様魔法を使い、あの丘へ逃げた。だが、魔力が足りなかった為、結界内の均衡が保たず、虹の見える丘は崩れていった。イエルは崩れる丘の上で涙をこぼしながら逃げて、逃げて、逃げ続け、遂に結界の外へ出た。

そうして逃げた先は、人族が住む小さな村だった。

ボロボロな姿で夜の街を歩いていたイエルを見かけた人族の老夫婦は茅葺き屋根の民家で、イエルを匿まった。

身寄りのないイエルはそこでサテスとの子供を産んだ。

その時、イエルは老女の手を握り、声を振り絞った。

『この子の、、、名前は、、ガラフォデス、、、男の子でも、、女の子であってもよ、、。

強くて、、消えない、、希望の光、、という意味があるの、、、、優しい、、あなた達に、、、、この子を、、、、託します、、、、、』

力尽きたイエルは、そのまま、静かに目を閉じたという。

彼女は子供を守る為に残り少ない魔力を全て移動魔法に使っていたのだった。

行方不明となったイエルをギャラスは自分が仕留めたとデマ言い続けた為、戦争は終わった。

実の息子を殺した、などと知りもしない人族の民はギャラスを英雄として崇め、反対にイエルは『裏切りの王女』として、魔族、人族からも、悪名高い王女として、言い伝えられたという。




だが、この物語は、

全ての種族の幸せを願った、イエル。

その実の娘

ガラフォデス王女の逆転の物語である。

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