親とシュークリーム
海湖水
親とシュークリーム
「ちょっと!!ちゃんとキノコ食べなさい!!」
私は目の前にいる娘に言った。
娘は今年で小学3年生。好き嫌いは小さいころに直さなければ、ずっと残るなんて聞く。私は好き嫌いを子供のころに克服することができたこともあり、娘にも好き嫌いはしないでほしかった。
しかし、娘は口を開かない。私が何度も食べるように促しても、顔を横に振るだけで、食べようとはしなかった。
「しょうがないか……まあこれから慣れていけばいいよね」
私はそうつぶやくと、娘の前のお皿を持って立ち上がった。
明日は、キノコを何か娘の好きな料理に入れてみようか。そんなことを考えながら、皿を洗う。
「苦労してるみたいだね」
そんな私と娘のやり取りを見ていたのか、娘がリビングを出ていくと同時に、夫がリビングに入ってきた。
「あっ、あなたからも言ってくれない?あの子キノコは食べようとしないのよ」
「まあ、好き嫌いは誰にでもあるよ。僕もキノコは苦手だったなぁ……もちろん、君のキノコ料理は絶品さ!!もちろん残しなんて」
「まあ苦手なら残してくれてもいいんだけど……、小さいころについた好き嫌いは大人まで残るって言うじゃない。ちょっとそうなると困るなあって」
「まあ、そうだよね……そういえば君は何か苦手な食べ物は無かったのかい?」
私は、一瞬考えた。言われてみれば、好き嫌いはなかった記憶がある。強いて言うなら、甘いものが苦手だっただろうか。といっても、甘すぎると苦手なだけなのだが。それこそ、シュークリームとか……。
「あ、そういえば、ずっと疑問に思ってたんだけど」
「うん?どうしたの?」
「昔はお父さんもお母さんも甘いものをよく食べてるイメージだったんだけど、この前帰省した時、シュークリーム食べなかったじゃない?なんでなんだろ?」
夫はそれを聞くと、あごに手をあてて、すこし考えるようにしたが、すこしすると口を開いた。
「二人とも、甘いもの苦手だったんじゃない?君も確か苦手なんでしょ?」
「まあ、キライってほどではないけど、苦手ではあるわね。でも、それが二人が苦手なシュークリームを食べる理由になるの?」
「親がまずは苦手なものをなくそう、ってかんがえたんじゃない?」
つまり、今の親は苦手なものを私に食べさせようと必死だったというわけか。
少し、親のことが理解できたような気がした。
親とシュークリーム 海湖水 @Kaikosui
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