第5話午後の授業もいつもと違う

5限目。

「さあ、始めるぞ」

そう言いながらこちらを見る山根先生。

「起立。気をつけ、礼」

『お願いします』

着席の合図が無くても各々座っていく。

初めの頃はその椅子を引く音に紛れて着席と言っていたがもう辞めた。

「今日は神田先生は休み、ということで今日は自習」

その声に周りはザワザワし始める。

実際のところ先生が入ってきた時点で神田先生がいないことに気付き、皆勘づいていたのでやっぱりという声が大半だ。

嬉しく思っている人の方が多いだろう。

なぜなら、自習と言っても1人1台支給されているタブレットで動画を見たり、読書したりするなど教室の中である程度騒がなければスマホ以外何でもありの時間になるからだ。

ということで僕はこれから昼休みの続きを読むことにする。

机の中から本を出し、ページを開けようとしたとき、

ゴゴゴゴガタッ

空いていたはずの隣の席が何者かによって動かされ僕の机に付けられた。

知ってのとおりこのクラスに僕の友人がいない。

昨日までならばこれが誰によって動かされたのか見当もつかなかっただろう。

しかし、心当たりがある。

というかその人物以外あり得ない。

確認のため顔を上げるとそこには予想通りの顔があった。

凛花である。

「孤立しちゃってるじゃん。隣で勉強してあげる」

「別にいつものことだろ。後そこまで気を遣わなくても・・・」

「はい、はいそういうのは聞きません」

しょうがない。気にせず読書しよう。



『ありがとうございました』

読書をしていたら1時間はあっという間に過ぎていった。

周りはヒソヒソと話している。

恐らく凛花が僕の隣に来たことを話題にしているのだろう。


6限目。

またもや山根先生が教室に入ってきて生徒達はザワつく。

本来この時間は数学ではなく山根先生の担当では無いからだ。

「はい、はい静かに。英語の片山先生は体調不良で帰ったのでこのプリントをやってください。あ、俺には聞くなよ?分からんから」

そのあまりにも正直な発言に笑いが起こる。

こういう先生が結局人気になるんだよね。

先生がプリントを配り終わると皆が当然のように机を動かし始め友達同士でグループを作っている。

当然普段通りならば僕は一人なのだが、今日は違う予感がしている。

ほぼ確信に近い。いや、今確信に変わった。

凛花が僕の方に荷物を持って歩いてきている。またもや隣の席を動かし隣に来る。

今回はなにも触れないことにし、プリントを解き始める。

しかし、隣からクスクスと聞こえるのでついそちらを見てしまう。

なんというか嬉しそうな表情をしている。なんで?もしかしてドMな人?

「なんで嬉しそうなんだ?」

「え?だってなにも言わずに私が隣に来てもなにも言わなくなったってことは私が隣にいることが普通になったってことでしょ?」

あれ?すごくプラス思考な考え方だな。普通嫌われたのかもとか思わないか?

「そうかもね」

肯定も否定もしない、それが一番だ。あの時はこう言っていたと言われるのが一番面倒くさいからね。

「もう、照れちゃって」

よくわかった。凛花はすごくプラス思考。何をしてもプラスにとられる。

まあ、様々な人と友好関係を結ぶのならとても良い性格なのだろう。

しかし、諦めてもらおうとしている僕からしては厄介だ。

僕には・・・・・・・・・

っと、早くプリントを解かないと次の授業で片山先生に怒られる。

普段はとても温厚な人なのにそういうところには厳しく、怒るとすごく怖い。



キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン

ギリギリだったけどしっかり最後まで解けた。

「俺はこの後用事があるから英語係にプリントを頼みたいんだが・・・・・・英語係いるか?」

「休みです」

一人の生徒が答える。誰が何係なのか把握してないが今日の欠席は僕の隣だけだったはずなのでその人なんだろう。

「そうか。じゃあ学級委員よろしく。片山先生の机に置いておいてくれ」

「はい」

「た~な~か~、返事」

「・・・・・・はい」

別に片方が返事をすればよくない?

まあ、別に良いけど。

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