第6話放課後もいつもと違う

プリントを回収していく。

僕は男子の、凛花が女子のを回収しているのだが凛花はすごい話しかけられてる。

一方僕は全く話しかけられない。陰キャだからね。

人見知りがなければ一人位は友達が出来てもおかしくないんだけどな。

そう思いつつプリントを回収し終えると丁度凛花の方も終わったらしい。

話してはいたが話に来るついでに皆が持っていっていたから早かったのだろう。

てか、今さらだが何で僕なんだ?

今日のことで本当に僕のことが好きなのかはわからないが本気なのはわかった。

しかし、僕はそれに応えることは出来ない。

その事情を話しても納得してもらえるとは思えないが・・・・・・



「どっちが職員室入る?」

「どっちでも」

こういうときはやりたくなくても中立のような立ち振舞いをするべきである。

「そっか。じゃあ、私が行ってくる」

「じゃあ、はい」

持っていたプリントを手渡す。

それを受け取り職員室に向かい始める凛花についていく。

さすがに任せきりも良くない。

せめて手前までは行くべきだとそう考えたからだ。


コンコンコン

「失礼します。一年一組立花です。プリントを提出しに来ました」

綺麗な礼と共に職員室に入っていく凛花。

そこにいるのはまさに優等生。本当に何故僕に告白してきたのか不思議でしかない。


「失礼しました」

振り向いてまたもや綺麗な礼をしている。

毎回満点な礼を出来るって相当気を使っていないと出来る芸当ではない。

「じゃあ、図書室行こっか」

「いや、帰んなくて良いの?」

「だって今日木曜日だし」

木曜日・・・・・・あ、定休日か。

家の店は毎週木曜日が休みである。

理由は・・・・・・・・・帰ったら分かるから今はやめとこう。

「でも、別に図書室来なくても」

「今日は親に迎えお願いしてないから待たないといけないんだよね」

これは初めからこうするつもりだったな。

抵抗はやめ図書室に向かう。



図書室に入るとそこには既に数人の読書部が本を読んでいた。

読書部が全員集まれば図書室が人で溢れかえってしまうためある制度がある。

それは読書時間の貯金制度。1日30分というのが基本だがそれ以上読んでいる生徒はその余分に読んだ時間を違う日に持ち越すことが出来る。

貯めた30分を使うごとに1日休むことが出来る。

そのため都合が良い日にここで読書をし、その日貯めた分で休む。それを繰り返している生徒が多い。

僕は貴史を待つという目的から毎日来ているためその貯金はものすごくなっているはずだ。

といってもわざわざ計算してないため何日分貯まっているのかは知らない。

こういう読書を長時間することで自由に休みがとれるというのも読書部が人気な理由である。

他にも土日に部活がないなどの理由もあるが。


毎日来ているため僕の定位置が確立し、そこには誰も座らなくなった。

そこは部屋の角の席。

そこまで特別な席ではないが居心地が良く他の席に移る理由もないためいつもここに座って読書している。

今日も同じようにそこに座り、鞄から本を一冊取り出す。

ここでは先程まで読んでいた本とは異なる本を読む。

こういうのは気分次第だ。

その本を開くが隣の席をこちらに動かし凛花がそこに座ったため読む前に小声で話しかける。

「ちょっと近くないか?」

「そんなことないよ。早く読み始めて」

どうしようも出来ないと諦め本を読み始める。すると凛花が僕の右腕と体の間の空いたスペースに左手を入れ込み、その状態のまま本を開き読み始めた。

ばれないようにそっと右腕を動かし脱出を試みるが凛花に止められる。

それを数分おきに行いながら時は過ぎていき帰る時間になるまで僚太は脱出出来ず腕を組んだままだったという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る