『家族の喧嘩の元になる蕾』


うちの祖母はガーデニングが趣味でさ。色んな花育ててるんだけど特に好きなのがチューリップで、毎年球根買ってきて植えてるんだよ。でも去年だったかな、そのチューリップで家族に変なことがあったんだよね。

蕾がつくかつかないかの頃、母親が「あの鉢植え、何色のチューリップが咲くかしらね」って言い出して。気が早いなって笑おうとしたら父が「赤色だろうな」って。そしたら母はムッとして「白に決まってるわ」って、もうその後どっちもお互い譲らないんだよ。たかだか花の色のことで。

夫婦喧嘩とか見たことない両親だったのにこんなことで喧嘩するんだって唖然としてたら2人とも俺に気付いて一旦は言い合いをやめたんですけど、まぁお互い納得いってないって表情で。気まずくなって自分の部屋に戻ったけど、なんか頭のなかがモヤモヤして。何だろってよく考えてみたら突然頭の中に、

「黄色以外ないじゃん、馬鹿じゃねえの」

って言葉が浮かんできて。(うわ怖!!)って慌ててイヤホン付けて音楽聴いて、気を紛らわせてなんとかその日は寝ることができた。朝になったら両親は普段通りに戻っていて、昨日チューリップの色の事で喧嘩したことなんかまるで覚えてないみたいだった。正直ホッとしたよ。

結局その年は、楽しみにしてた筈のチューリップを祖母が全部花が咲く前に引っこ抜いて燃やしちゃったから、何色が正解だったかはわからないままなんだよね。

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