『かそう』


祖父の墓参りに行ったときの話です。命日に偶々近くを通りかかったので、3歳の息子を連れて行きました。年末の、小雨のぱらつく寒い日でした。平日なので誰もいない墓地を、祖父のお墓に向かって歩いていると息子が突然何か言い出して。

「かそう!」

さっきまでの会話と何の繋がりもない言葉だったので最初は意味がわからなくて、息子に聞き返しました。

「え、なに?」

「かそうだよ!」

“かそう”……頭の中でその文字列を変換してみたら急に怖くなって、急いで息子の手を引いてお墓を目指しました。息子はその後は特にその言葉を口にすることもなくいつも通りの様子だったので、そのまま墓参りを済ませて帰りました。

……これが例えば秋頃の話だったら、ハロウィンの“仮装”のことかな、保育園でそんな話題が出たのかなと微笑ましく受け止めてたと思うんですけど、もうそんなイベントはとっくに終わった年末の話だったので、どうしても別の言葉にしか思えなかったんですよね。

“火葬”なんて言葉、まだ3歳の息子が知ってる筈ないのに。

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