第13話

 大学に入学したばかりのころに、過剰服薬ODをした。トラゾドン塩酸塩錠を20錠飲んだのだ。数十分経ってぐるぐる眩暈がし始め、目がチカチカし、立っていても座っていても布団で寝転がっていてもどうにも身のやり場がないほど気分が悪く、吐いて薬を身体から出そうとして指を喉の奥に突っ込んだが吐くに吐けず、本当に死ぬかもしれないと思った。眠れぬまま朝を迎えてもまだ気分は悪いまま、身体を横にしていたからといって楽になるわけでもないが、かといって何もできないので布団の上で身もだえし、24時間経ったころにようやく気分の悪さから解放された。

 過剰服薬ODは意識が朦朧とするだけなのかと思っていたが、とてつもなく苦しくて、全然きれいなものじゃない。

 こんな苦しい思いはもう二度としたくないと思ったので、これ以降過剰服薬ODは一切していないし、本当に自殺するときも過剰服薬ODは選ばないつもりだ。

 私はこのときに、死ぬ疑似体験をし、人間は全員必ず死ぬんだ、ということを芯から思い知った。それまでも人間は必ず死ぬということは知識として知ってはいたが、心の底からは理解していなかったのだ。

 先生が嘔吐したときも、苦しかっただろう。胃液を吐いたということは、忙しくてろくに食事も取れていなかったのだろう。死ぬかもしれないと思っただろうか。

 私が先生の男性器を喉の奥まで咥えこんだとき、苦しかったけれど、嘔吐反射は起きなかった。先生の陰茎に刺激されて吐き気がするなら望むところだけれど、先生の陰茎でいくら喉に刺激を与えても心地よすぎて吐けないのだろう。診察時間内のほんの10分程度しか先生を咥えられなかったけれど、、私は先生が望むなら何時間でも、先生のことを咥えていられる。でも、先生がそんなに長時間勃起し続けたとしたら、海綿体が壊死してしまうかもしれない。男性が身体の構造上長時間の愛撫に耐えられないのは哀れなことだ。私は、私の口の中で先生の陰茎が朽ち果てたら、私が最後の女になったということだから嬉しいけれど。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る