第11話

 先生は、大きすぎない切れ長二重の三白眼で、育ちの良い美人とセックスしていそうな目をしている。日常的に美女を見ています、性的に満たされています、という目だ。

 ビル・エヴァンス似の先生は女に興味ありませんよ、という振りをしているが実際は女好きなのが透けて見える。

 奥様はぱっちり二重の美女なんだろう。医師は女を選べるから、美女なうえに巨乳かもしれない。

 高校までは全くモテなかっただろう。東京の国立医学部に入学して、多少モテたかもしれないが、遊ぶ暇はなかっただろう。医師になってから、急にモテるようになって美人な看護師とたくさんセックスしたに違いない。

 先生が感情的なのは、感情的でも許される環境で生きているからだ。上司や他科の医師には頭が上がらないかもしれないが、社会的にヒエラルキーは上位で先生先生と呼ばれて持て囃されている。製薬会社のMRを始め、周りの営業職の人間や接客業の人間は先生に対して平身低頭接するだろう。女に対してひどい仕打ちをしたところで、後から後から湧いて出るように女が寄ってくるだろう。感情的にならないように自分を抑制する理由がない。下々の人間が、感情的に生きたら食っていけないから、どうにかこうにか折り合いをつけて感情を抑制しているのと対照的だ。

 医師が医師免許を取得した年は、ネットで調べられる。先生はそこから計算したところ、40歳だと推測される。40歳で20代の嫁を持っていたとしたら心底軽蔑する。散々遊んで最終的な結婚相手を若い女から選んだということになるからだ。順当に考えれば30代半ばから同じ40歳くらいの嫁だろう。

 私は先生の唯一の終わりなき愛を得たいが、先生が若い私に唯一の終わりなき愛を注ぐことを決断するような人間だったら、私は幻滅する。

 先生はまるで男性器など持っていないかのような振る舞いをしている。実際は野蛮な陰毛の奥にしわしわで赤茶色い性器をぶら下げて診察しているのに。毎日のように自慰をしているのに。

 私は、先生が男性器を股間にぶら下げて私を性のはけ口として利用したことと、先生という人間そのものを統合できないままでいた。

 

 

 

 

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