第43話

両親からの連絡を受け、翌日、珠月へ連絡したところ、少し会えないかということだった。

湊人は思わぬ誘いにどきりとした。珠月から会いたいといってくるのは、今回が初めてだった。

もちろん理由は大学病院での検査についてだろうが、それでも湊人にとっては珠月とふたりで会えるたまの機会だ。嬉しくないはずはない。

珠月は三日後の夕方、予定がないかと訊いてきた。三日後の夕方なら空いていると湊人が応えると、珠月は待ち合わせ場所を指定してきた。だが、その場所は意外にも、珠月の住む最寄もより駅からは幾分いくぶんか離れた京王けいおうよみうりランド駅だった。

よみうりランドは東京都とうきょうと稲城市いなぎし神奈川県かながわけん川崎市かわさきし多摩区たまくにまたがる遊園地ゆうえんちだ。絶叫ぜっきょうマシンや観覧車かんらんしゃ、また子ども向けのアトラクションなども充実じゅうじつしており、立地場所も都内にあるのでアクセスしやすく、カップルや家族層など幅広く人気を集めている。

珠月がそんな場所を指定してきたので、湊人はもしかしたらずっと自宅で過ごしてきたため、遊園地でストレスを発散はっさんしたいのかなと思った。湊人は待ち合わせ場所について了解し、珠月との電話を終えた。

電話を終えてから、湊人は重大なことに気づいた。よみうりランドで待ち合わせ、ということは、これは珠月との遊園地デートになるのではないか。

拓海があんな状態のなか、罪悪感ざいあくかんを感じないわけはなかった。だが、記憶を失ったいまの珠月には、拓海の状態は関係ない。それどころか、拓海のことを認識していない。なので、それを理由に断るのもまた違うように思われた。

ストレス発散くらいになら付き合っても問題はないはずだ。湊人はそう思い、その場は納得することにした。

だが、三日後、夕方に待ち合わせの京王よみうりランド駅に到着し、湊人は大きな誤りに気づいた。

クリスマス・イブ目前の十二月二十三日、日曜日。季節はクリスマスシーズン真っ只中のよみうりランドはイルミネーションに彩られており、よみうりランドへ向かうゴンドラの待機列たいきれつ、よみうりランドのそこかしこにはカップルたちで溢れていた。そして、そのなかに湊人と珠月は一緒にいる。これはどう見てもデートであり、ほかのカップルから見れば湊人たちもまたカップルに見えていることだろう。

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