第42話

河瀬真琴かわせ まことは、湊人が通う大学の二年生でどうやら同じ学部だと判明した。

湊人の同期の友人が河瀬のことを知っていた。

このあいだ見かけた際はそうは見えなかったが、どうやら河瀬はかなりの男好きで、彼氏を取っかえ引っ変えしていてその手のサークル、いわゆるヤリサーでは有名人らしかった。

サークル活動自体にはあまり顔を出していないらしく、飲み会などの集まりがあるときには顔を見せ、飲みの場で知り合った男とフェードアウトするということを繰り返していたようだ。

湊人は話を聞きながら、自分とはまるで住む世界が違う人種だなと思った。話できいたり、SNSなどではそういった話を耳にしたことはあるが、湊人の身近にはいないタイプだ。

湊人は友人へどうやったら河瀬と会えるかを聞いた。だが、大学にもたまにひょっこり顔を出し、サークル活動も主に飲み会にしか来ないので、タイミングをみて会うのはどうやら難しいということだった。

これには湊人は困った。肝心の河瀬に会えないのであれば、話の聞きようもない。

「河瀬真琴はやめとけ。おまえみたいなまじめくんはおもちゃにされて捨てられるのがオチだぞ」

友人は話の最後にそんな茶々ちゃちゃを入れた。どうやら河瀬に会うのは違う目的と思われているようだった。そういう目的ではないのだが、どちらにせよ河瀬真琴と会うのはきびしそうだ。


珠月の両親から連絡があったのはその夕方だった。珠月の大学病院への転院が決まったという報告だった。

この大学病院では脳波を調べるための専門機器がアメリカの企業より取り入れられており、湊人に珠月の転院をすすめた准教授の学生時代の同期である医師がいるということもあり、珠月の紹介先として准教授づてに通っていた病院へ話を通してもらった。

両親からこの報告があったということは、珠月は大学病院で検査を受けることを決心したのだ。

湊人は肩の荷がおりたようでほっとした。

あとは大学病院で検査を受けて、新しいなにかが見つかればと思った。

両親の話によれば年明けに大学病院へ行き、担当医師との面談と検査についての説明を受け、機械の予約をとって後日検査を受けるということだった。

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