第38話
「ふむ、ことは思ったよりも
湊人は昨日の主治医からの経過報告の内容を大学の准教授に説明したのだった。以前に珠月の状態について相談したことがあり、またその分野に詳しい人物で思い浮かべたのが彼だけだったので、再び准教授へ相談することにし、講義を終えてから准教授の部屋を訪ねていた。
湊人はひと通り話し終え、用意された紙コップのコーヒーに口をつけた。コーヒーは味が薄かったので、砂糖とミルクを入れた。
「
「抑圧された記憶、ですか」
湊人は先日と同様にメモをとる。湊人にはまた初めてきく単語が准教授の口から出てきたなと思った。
「うん。無意識下に封印された記憶、あるいはそのような記憶が存在するとする仮説のことを指している。これについて、二千十一年、スウェーデンのある大学の研究によって、
「はあ」
すでに湊人は自身がメモする内容すら、半分も理解できないでいた。
「つまり、脳波を測定したところそういったメカニズムが判明したのなら、北村さんの脳波を調べることで、無意識に記憶を封印しているのかどうかがわかるかもしれない」
「本当ですか?でもこの間の医師の話では、北村さんの脳は正常に機能しているということでしたが」
先日の医師の話を思い出しながら、湊人がいう。
「人間の脳はとても
湊人はもう頭のなかがこんがらがっていた。
だが、医師とは違い、准教授は最後にまとめのようなわかりやすい方針を示してくれた。これによって湊人は、いま珠月になにが必要かを理解した。
ことによっては、専門的な設備のある別の病院での精密検査が必要かもしれないということらしい。
やはり医師と、これが研究をしながら学生に普段から講義を行う大学講師との違いなのだろうなと思った。
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