8
第28話
イルミネーションが
大通りの坂を両側に
表参道の坂はクリスマスシーズンを迎え、十二月の寒さにもかかわらず歩道にはカップルたちで溢れかえっていた。
表参道の坂を登りきり、やがて青山の裏路地に入った。指定された店の前に到着する頃には息が上がっていた。吐く息は白く染まり、夜の空気に溶けていく。
拓海は息を整え、その扉をくぐった。
その後、バーカウンターでカクテルを受け取り、フロアの人波の中を進んだ。
真琴の姿を探しながら、フロアを歩いていると、後ろから肩を叩かれた。振り返ると、そこに河瀬真琴がいた。
真琴はミニスカートにオフショルダーのセーターと、
真琴は普段、大学では大人しい
拓海は真琴に話しかけようとしたが、まわりの音が大きいため、まったく話ができるような環境ではなかった。
真琴は拓海に向かい、くいくいと親指で後ろを指差した。どうやらついてこいということらしい。真琴がそちらに向かって歩き始め、拓海はそれに従った。
真琴が鉄製のドアをくぐると、拓海も真琴に続いていった。
バックヤードらしき場所に誘われ、中に入ると三人の男たちがいた。いずれも髪の毛を金色や赤に染めて派手な色をしている。歳は自分とさほど変わらないだろうと思った。その中に見覚えのある顔を見つけ、拓海は自身の
「なになに、マコ、そいつ誰よ?」
金髪の男が真琴に言う。
「この子は拓海、あたしの大学の後輩」
「ふうん、珍しいじゃん。マコがダチ連れてくるとか」
「それがね…」
「おい、アンタ」
真琴がいいかけたその言葉を
「ああ?」男は
「北村珠月って、知ってるよな?」
拓海が言うと、一瞬、はあ?という表情をしたが、そのあと男はああ、といった具合にニヤリと薄い笑みを浮かべた。
「さあ、知らねーな」
「とぼけんじゃねぇよっ!この子だ、知ってんだろっ」
拓海は言いながら自身のスマートフォンに珠月の写真を表示させて男へ見せた。
瞬間、男の顔が
「…ああ、知ってる、で、それが?」
男が次に発した言葉に、拓海は一気に頭に血がのぼった。
それからあとのことはあまり覚えていない。
気づいたら拓海は男に
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます