第27話
主治医は珠月の状態について説明を始めた。
診断名は
「珠月さんの記憶障害が、未だに心因性によるものか、外傷性によるものかははっきりしていません。ただ、あまりに健忘の期間が長いため、今後の
担当医は
「あの…」珠月の母はおどおどとした様子で口を開いた。「良い状態とは言えないとは、つまりどういうことでしょうか」
「このまま記憶が戻らない可能性もゼロではないということです」
担当医はきっぱりと言った。
「そんな…、あの、なんとかならないんですか」
「可能な限り、手は尽くします。しかし、逆行性健忘には現代でも完全な治療方法というのは
「はあ…」
珠月の母は困った顔で湊人のほうを見た。どうやら珠月の母には、専門用語の
「あの、珠月さんの記憶が戻る治療方法はあるんでしょうか」
湊人が担当医に訊く。
「逆行性健忘の治療であれば、やはり
つまりは、今の時点ではなにも手立てがないということだろう。
これには湊人も落胆した。
なにか新しい情報があればと期待していたが、この経過説明でも、やはり湊人が知る以上の
また、
珠月は今後も
待合室まで戻ると、湊人は珠月の両親にこれからアルバイトへ行くと告げ、病院をあとにした。
次の経過説明は、一週間後の十二月十三日ということだった。その際にもまた同席をお願いしたいと両親は言っていた。湊人はこれを了承し、ふたりと別れた。
いったい珠月の記憶喪失は、いつまで続くのだろうか。
湊人は珠月のことを思い、なにもできないでいる自分自身に
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