7
第25話
珠月が病院を退院して間もなく、湊人は珠月の両親から連絡を受けていた。
珠月の両親には、見舞いに通っている間に自身の連絡先を伝えていた。
珠月自身の携帯電話は、どうやら事故の際にタッチパネル画面が
両親からは、すぐに病院に来てほしいということだった。用件を訊こうとしたが、着いてから説明すると言われ、教えてもらえなかった。
今夜、湊人には夜勤のアルバイトがあったが、それまでの時間なら問題ないと伝え、すぐに行くといい電話を切った。
湊人が自宅を出ると、空はすっかり
十二月に入り、街はクリスマスムード一色になっていた。商店街の
クリスマスか…。
本来なら、珠月は拓海と幸せなクリスマスシーズンを過ごしていたはずだった。それが珠月が事故に遭い、記憶喪失になり、拓海も離れてしまった。湊人にはそんな珠月が
だが、湊人にはもうひとつの考えが浮かんでいた。
いまの珠月は、記憶もなく拓海のこともわからない。それなら、代わりに自分がそばにいてあげることもできるのではないか。
それは湊人にとって、拓海への裏切りのように思えていた。しかし、数日前の拓海の態度こそが、珠月に対する裏切りなのではなかったか。
そうであれば、拓海への裏切りもなにもあるものか。いちばんは珠月が幸せでいることではないのか。
そこまで考えたとき、湊人は初めて自身の気持ちと、拓海との友情が変わりつつあることに気づいた。
俺はいま、なにを考えた?
湊人は自身に問いかける。
そんな気持ちが湊人に芽生え始めていることに、湊人は悲しさを覚えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます