第20話
准教授は先ほど言ったそのふたつの単語をホワイトボードへ書き、湊人へ説明を行った。
講義ではまだ習っていない内容だったので、湊人は頭をフル回転させて准教授の話す内容を理解しようと努めた。
「例えば、あまりにショックな出来事が目の前で起こったときに、
「はあ…、なるほど」
湊人は自然とノートにペンを走らせ、准教授の言ったことをメモし始めた。講義のときさえ、こんなに真剣にメモしたことがあっただろうかと思った。
「人間の
湊人はさらに准教授の説明をメモした。
「…じゃあ、北村さんはいま、この解離性同一性障害の状態にある、ということでしょうか」
「いいや、それは
「それなら、いちばん最後のが当てはまりそうですね。北村さん自身が交通事故に遭ったときに、強いストレスを感じて、それが今回の記憶喪失に繋がった。そしてそのストレスの強さから、別の人格を作り出してしまった」
「うん、なかなかいい解釈だね。ただ、この解離性同一性障害は、さっきも言ったように、そんなに簡単に引き起こされるものじゃないんだ。それに、北村さん自身の外傷はかなり軽度なものだったと言ったね。それなら、北村さん自身が死を覚悟するくらいの大事故に遭うくらいでないと、解離性同一性障害を引き起こすまでのストレスというのは考えにくいな」
准教授はそこまで言って、
珠月が准教授のいう、解離性同一性障害というのでないのであれば、いまの珠月はいったいどの状態になるのだろうか。
ただの記憶喪失だとするなら、あの珠月の様子はどうやって説明ができるのか。
「神林くん、ひとつ訊いてもいいかな」
「あ、はい」
突然話しかけられ、湊人は顔を上げた。准教授は
「北村さんの記憶喪失の原因は、本当に交通事故が原因なのだろうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます