弟の友達



 私が10歳になる年、弟が産まれた。これまでの話で周知の通り、私達の住む世界では男の子が産まれるだけ奇跡で、ねーねも私も、妹の璃華も、私達はその弟を、ねーねが千の道を照らすようにって付けた千陽って名前の弟をたいぎゃな大切にして、可愛がった。やがて千陽も成長して、その下に妹もできてお兄ちゃんになったり、ねーねに似て優しくて社交的な明るい性格だったから友達もいっぱいできた。その千陽の友達の1人に神本恵ちゃんという男の子がいた。私らがメグちゃんと呼んでいたこの子は一人っ子だったからか小さい頃から私達によく懐いてくれていた。ねーねとにーにが高校の時に実家を出てからも、1番上になった私に、千陽と一緒になってよく甘えてくれた。私が高校生の時、絶望的な怪我で悠希と別れたりヤケになっていた時も、メグちゃんは変わらず「よしねえよしねえ」って来てくれて、少なからず前を向くきっかけを与えてくれた。


「うちがはよおおきなって、ゆうにーにの変わりに、うちがよしねーねのおむこさんなったげる!」


 8歳のメグちゃんは私にそんな事を言ってきたりもした。まあ、さすがに私は本気にはしなかったけど、彼にとってはあながちこれは冗談でもなかったみたいだった。それから私は実家を出て大学に行って資格を取ってスポーツトレーナーとして就職して・・・毎年毎年、盆や正月などに実家へ帰る時には、メグちゃんは必ずと言っていいほど遊びに来ていたし、そのうちメグちゃんが成長していくにつれ、私も特別な思いを抱きつつあった。そして、彼や千陽らが高校2年生、私が社会人4年目の26歳になる年に愛の告白をされた時、私も彼をただの弟の友達としては見てなくて、その告白を受け止めた。その時の事については「男子が減り続ける話」の方で書かれてるから、ここではあまり語る事はないと思ったけど、そっちで書かれてない事をちょっと紹介しようかな。


「ゆう兄の事はもう完全に吹っ切れたと?」


 告白されて付き合う事になって数日、不意にメグちゃん・・・恵は真剣な眼差しで聞いてきた。


「・・・うん、もう完全に離縁して9年経ったし、そうじゃなかったらこぎゃんしてメグちゃんと付き合ったりせんたい」


「そっか、そうよね。まあ、あのまま芳美ね・・・芳美とゆう兄が順調に行っとっても、うちは奪いに行くつもりだったばってん」


「は?!そんで私がそれでも悠希ば選んだら?」


「そん時はゆう兄ば○してでん・・・ってふふ、冗談よ」


「いや、今の冗談に聞こえんかったぞ・・・」


「まあそんくらいうちなずっと昔から本気であんたの事好きとだもん」


「年上なら璃華と弥咲のが近いて、なんで私だったと?」


「なんでって言われたっちゃねえ・・・人ば好きになっとに理由もなんもにゃあよ。それに璃華ねーちゃんと弥咲ねーちゃんな昔から夫婦んごつして付け入る隙なんかにゃあよ」


「はは、それもそっか・・・これから色々迷惑もかけるかんしれんばってん、改めてよろしくお願いします」


「こちらこそ」


 こうして、私は弟の友達と結ばれる事になったのだ。















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