選択



 2021年 春



 私と陽斗は中学生になった。それまで2人で続けてきたサッカーを陽斗は中学でも続けたが、私はどうせなら新しい事がしたいなと思ってやめて、遊びでも未経験だった野球部に入った。まあ、新しい事がしたかったというのは、それならバスケでもバレーでもバドミントンでもいっぱい選択肢あるじゃんと思いそうなもんだけど、私が野球に興味を持ったのは、実はもうひとつの理由があって・・・・・・



 入学式前


「これ、面白いの?」


 私が電子書籍で読んでいた漫画を横から覗いてくる陽斗。


「うん、地味な高校生が甲子園で活躍するエースに登りつめる話でね」


「甲子園ねえ、陽葵、野球に興味なんかあったんだ」


「まあスポーツ全般見てはおるし、私も運動神経自信あるし、野球やってもそこそこ行けるかな」


「いやいや、そんな甘いもんじゃないでしょ」


「陽斗はいつも現実的ね、もっと夢見ようぜ、私達まだ12歳なんだけん」


「いやあ、ばってん自分の旦那になる人の将来はそら真剣に考えるよ。ばってんまあ、あんたがほんなこて甲子園に行けるなら話は別ばってん」


「ほう、言うたな?」


「いや、冗談たい。今まで野球なんかやったことにゃあて」


「ならその冗談ば冗談じゃなくしてやるけん・・・決めたぞ陽斗!私、中学は野球部入る!」


「・・・は?!あんた変な意地張っとんなら・・・ダメだこいつ、いっちょん聞いとらん」


 とまあ、こんな本当にくだらない意地で始めた野球だったけど、たまたま1年生からレギュラー取っちゃって、ええ、まあ自慢じゃないんですがね。陽斗の方もね、男子サッカー部で凄い活躍してたんですけど、いつしか私のサポートに専念するためとか言って辞めて・・・陽斗もプロ行けそうだったからちょっと勿体ない気はするけどね、高校に上がって初めての甲子園が決まって、2人で話した時もね、そこは悩んだって言ってたし。それでも自分より私の事を応援したかったって・・・陽斗はそんなやつだから私は絶対に頭上がらんし、変な真似はできんなって。それで、私は名門校からスカウトとか来てたのになんで地元の公立で甲子園にも出たことのなかった第四高校に進んだかって言うとね、まあ寮生活になると陽斗と離れちゃうから嫌だったてのと、漫画みたいに無名校で甲子園出れたら面白くね?って単純に思っちゃったんだよね。まあ、昔からスポーツで誰かに負けた事無くて、私もまだ15歳のクソガキでちょっと地元で有名になって謎の驕りみたいなのもあったし・・・・・・それで、野球部に入ったら、そんな私と同じ考えで来たやつがいた。確か、最初は向こうから声をかけてきたと思う。



「君があの葛西陽葵?」


「お、私も有名になったもんや。君、新聞で見た事あるわ、村上千咲だろ?飯野リトルシニアのエースの」


「知ってくれとったか」


「そりゃあこん田舎じゃ噂回るの早ぁし。そんで、千咲なら大阪の名門校から誘いもあったろ?なんで四高に?もしかして私と同じ理由?」


「まあ、言うならばそうね・・・それともうひとつ、葛西陽葵と野球がしたかった・・・むしろこれが一番の理由かな」


「私と?ヘー、そらなんか嬉しいなあ」


「あんた自分で思うよりすぎゃー奴だけんな・・・ほんで、高校でもショート一本でやるつもり?」


「え、まあ私の1番自信あるポジションだし、千咲は当然ピッチャーよね?」


「そらもちろん。ほんでね、ちょっと中学ん時の映像見さしてもろて思ったつばってん、陽葵、ピッチャー練習せんや?」


「・・・は?私が?ムリムリムリカタツムリ!確かに肩がいいけんてショートになったばってん、中学でちょっと遊びでブルペンで投げてみたらとんでもないとこにボール行っちゃったし!」


「いいと思うけどな、その下半身もピッチャー向きだし」


「え、ほんなこ?」


「うん、筋肉の付き方見ても・・・今から本格的にやれば、100マイルも投げられるし、エースになれるぞ」


「そんなん言われたらちょっとピッチャーもやりたくなってきたかもなあ、へへへ」


「お前、おだてに乗りやすいタイプだな・・・」


 そんなこんなで千咲に乗せられ、キャプテンの澪先輩にも乗せられてピッチャーの練習もするようになった。最初は練習量多すぎて毎日どこかしら痛かったけど、まだ成長期だったからかな、そのうち慣れてって、夏の大会が散々に終わった後の練習試合、先発で投げる事になって・・・その後は本編でも書かれてる通り、自分でも嘘だろって思うくらいの活躍しちゃって、プロ野球の道に進む事になったんだ。ちなみに千咲とはプロに行ってからはずっと敵同士で、何回も対戦したなあ、確か成績は通算で・・・あ、その辺の話はまた次回に。
































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