意識



 2012年 9月14日


 私に最初の妹ができた。弟がいいなあなんて思ってたけど、まあ私達の世界は男の子が殆ど産まれないし、私もまだ幼いながらに、初めての妹は可愛くて仕方なく思えたし、大事にしなきゃって思ったのを覚えてる。多分、それが幼心に姉としての自覚が芽生えた瞬間だったんだと思う。それからこの3年半後には次の妹も産まれて、少し空いて中学生の時に弟が産まれて・・・両親はどっちも私に対して一回も「お姉ちゃんなんだけん」とか絶対に言わなかった、多分言わないでおいて、我慢させないようにしてくれたんだと思うけど、私は勝手にみんなの姉ちゃんになっていったし、その私の横で陽斗も、本当なら自分の妹は1人だけなのに、みんなのお兄ちゃんになっていったんだ。といっても一番下の妹の恵梨には何もしてやれなかったけど・・・・・・

 それで、そんなみんなの姉としてじゃなく今回は私、葛西陽葵個人の話をしたいと思います。



「私の将来の夢はプロサッカー選手になることです」



 小学校4年生の時の将来の夢を語る授業で、私はそんな事を言っていた。実際、この頃地元のユースチームでそれなりに活躍して本当になれるかもと思ってたりして・・・まあ結局、サッカーじゃなくて野球の道に進むことになるんだけど・・・それでこの時、陽斗がなんて言ったかっていうと・・・・・・



「ぼくの将来の夢はひまちゃんのおむこさんです」



 あいつ、皆の前で真剣な顔でそう大きい声で言い放ったんだよね。ひまって名前につく子は他にもいたけど、陽斗がそう呼ぶのは私だけだったし、それから皆がはやしたりしてきて恥ずかしかったのを覚えてる。でもまあなんだかんだ陽斗とはただの友達じゃないけど、付き合ってるわけでもない感じがこの頃は続いてて、いよいよ意識しはじめたのは多分、6年生になって修学旅行の時だったかな・・・・・・



 2020年 6月 長崎



 修学旅行の夜、昔はよく女子が男子の部屋にこっそり忍び込んで先生に怒られたりなんて事があったらしいけど、今はあちこちにカメラついてるし、そもそも男子が少なくて私達女子に対する先生の警戒もハンパじゃないからそんな事はできるわけがない。けど、その男子の方はまあ法律の影響もあって結構自由にされていて、男子達が陽斗を連れて私達の部屋にやって来た。友達も皆、私と陽斗の関係は知っていて、女子に押し出され男子に引っ張られ、私は無理矢理陽斗と2人きりにされてしまった。陽斗はお風呂に入って洗った髪がまだ乾ききらず、浴衣もはだけ気味で私はもう心臓の鼓動を抑えるのに必死だった。それまでただの双子みたいな感覚だったのに、この時は初めて私が陽斗を「男」として意識した瞬間だったんだと今では思う。


「陽葵?どした?」


「い、いや別に・・・」


「?・・・あ、別に陽葵なら見てもええよ」


「な、な、にゃんば?!」


「それば男子の僕に言わせる気?」


「もうお前は・・・」


「ふふ、陽葵かわええ」


「女にかわええとか言うな」


「だってかわええもん」


「ぬぅ・・・ほんで帰ってからお土産配るのどうする?」


「さしよりみーちゃんとこ行ってそっから・・・」


 この時はそんな他愛もない話で終わって、部屋に戻ってから友達にも「なんだよ」とか「ヘタレ陽葵」とかさんざん言われたけど、これで陽斗に愛想つかされたわけでもなかったし、おかげで中学上がる前の告白に繋がったからよかったのかな・・・・・・?

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