第8話 歯磨き粉

『ねぇ咲。』

「うーん?…どうしたの?」


たまに僕は咲の横で深く寝てる時に、

急に眠ったまま起き上がってなにかを話してからまた寝る。



―――――「……」

「…?」

「咲。咲!!」

「なに?どうした?」

「……一緒の歯磨き粉使お…」

「はい?歯磨き粉??」

「……」


僕はもう既に横になって寝ていた。


咲は笑って僕を見ながらまた眠りに付いた。




――――――――――――翌朝。ベッドの中。

侑海ゆうき、歯磨き粉一緒の使いたいの?」

「え?あぁ、うん。」

「夜中寝言でそんなこと言ってたからさ。」

「ごめん、」

「…知ってるけどね。勝手に使ってた事くらい。」

「…ごめん。」

「いいよ。」

「大丈夫。歯磨きは別のモノにしてあげるから安心して?」

「ん?歯ブラシ?の事?」

「うん。」

「…どこまで共有したい?」

「服はいい。お箸とかは同じの使いたい。お皿も、歯磨き粉も、歯ブラシも。。」

「同じものがいいのね?」

「うん。」

「…可愛すぎでしょ。」

「そう?」

「うん。可愛い。」

「…咲さん、死ぬほど好き。」

「わかってる。あたしもだから。」

「…大好き。」


彼女は僕を安心させるように包み込んでくれた。


『世間のかた』なんてどうでもいい。

『普通』なんてどうでもいい。


大切なのは、僕らにとって重要なのは、

その瞬間とき その瞬間とき

お互いが何を求めているか。


そこだと思っている。

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