第5話 都合のいい
――――――商店街から徒歩5分足らずの六畳一間のアパート。布団を2枚敷くと何も置けない。
――――結局僕は誰も信じられなかった。
いや…信じたくなかった。
でもそんな僕の構って欲しいのに閉ざしてしまう心により添ってくれる人が一人居た。
――――――――――――。
「……」
彼女の肩に首を乗せると頭を優しく撫でてくれた。
「…もういいかな。」
「うん?なにが?」
「もうお前でいい。」
「あたしはいつだってあんたでいい。」
「…今もなの?俺の事全部見えてるの?」
「見えてるよ。手に取るようにね。」
「じゃあ今何考えてるかわかる?」
「わかるよ。 …おいで。全部受け止めてあげるから。」
僕は起き上がって沙耶を包み込んだ。
この人の体付きは優香に似てる。
小さい体なのに海みたいな心の持ち主。
「…さあや。」
弱々しく囁いた。
「なぁに?」
彼女も同じ声の大きさで返してくれた。
透き通るような優しい声。
「俺に首輪付けて。」
「怖いの?」
「違う。」
「教えて?心の奥までは見えない。」
―――――――――――――――そんなものだ。どうせ誰も俺の事なんか分からない。
そうやっていつもいつもひねくれて歩き回っていた。
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