第2話 姉上に縁談話が来たらしいのだが少々厄介な事になってしまった件

 ある日姉上に縁談話が来たらしいのだが、少々厄介な事になってしまった。


 公爵家長男であり次期当主の予定なのだが、有能過ぎて無能を演じ続けている俺 ネルヴァ・アルフォート には十個上の姉上がいる。

 して、この俺は現在六歳である。姉上、十六歳。


 こんなにも歳の差があるから、父上が浮気したのか不倫かを想定してまうであろうが、残念ながら俺は立派な嫡子である。


 まあ、だからこそ面倒ではあるのだが――。


 この国『アットツイホウ王国』では、十五歳になると『付与の儀』という催事が執り行われる。

 これは女神による加護と伝えられ、その人に適正する称号が付与されるといった人生最大イベントにして、時には最悪な行事とも言える催事なのである。


 ――だから俺は、この催事の被害者なのだと声を大にして言いたい。


 姉上はこの『付与の儀』で『剣聖』の称号を付与されて、この国の期待を一身に受ける身である。


 この『剣聖』とは戦闘に優れていて、特に剣術に秀でると言われているらしい。


 俺は次期当主としてあらゆる訓練を受けているのだが、剣術に関しては『剣聖』である姉上より受けるのだ。


 が、物覚えが良過ぎる俺は既に姉上の実力を凌駕している。


 父上は言う。


「やはり『剣聖』だけあって、最近のあいつの斬撃はもはや早過ぎて目で追えない」


 だが、姉上の動きは、俺には時が止まったようなスローモーションに見えてしまうのだ。

 

 ――うむ。俺は有能過ぎるからな。


 自覚はしている。


 至って、姉上との訓練時にイカサマを使って、敢えて俺が無能を演じてるなど姉上は知る由も無いだろうと思うのだが――。


 話は戻って、

 ある日の事、『剣聖』である姉上に縁談話が来たらしい。


 相手はこの国の第四王子らしいのだが、その男、お世辞でもイケメンとは言えない風体である。

 王に似たのか、王女に似たのかは不明だが、どちらも顔立ちは良いのだ。


 ――うむ。どうしてこうなった?

 の言葉が一番似合うな。と思う。


 さて、問題はここからなのである。


 この縁談話、なにやら少々事情があるらしいのだ。


 噛み砕いて言うと、『政略結婚』というものらしい。

 両家にも思惑があり、それに当事者両方にも思惑があるらしいのだ。


 何故、六歳の俺なんかがこうも分析出来るのか?

 ――うむ。それは俺が有能過ぎるからである。


 まず、女は本能的に男に守って欲しいという欲望があるのはひとつの事実であり、実際、姉上もそのひとりである事が判明した。


 ――『剣聖』のくせにな。


 そして、姉上の男を見る目は少々斜め上を行っている。

 不男ぶおとこまっしぐらの第四王子をイケメンだと思い込みまるで惚の字である。もっと言うと、第四王子を見つめる姉上の目はもはやハート型なのだ。


 それに相まってと言うべきか、どうかはさて置き。


 この不男まっしぐらの第四王子の称号は『迷える眠りの子羊』だ。


 ――なんだこれ?


 要は、この国最弱である。からして、伴侶になる女性に守って欲しいらしい。


 ――なんか二人、色々矛盾しまくりだな。


 だから、現時点でのこの国最強である称号を授かった姉上に白羽の矢が立ったという事だ。


 まあ、これが一番の厄介ごとになった引き金と言えるのだが。


 これは当事者の事で、両家の思惑はと言うと。


 この国の公爵家であるアルフォート家としては、王族の仲間入りが出来るから、同じ公爵家の中でも頭ひとつ抜きん出る事ができる。

 もっと言うと、権力を得られるということが大きいのだ。


 王族側としては、この国最強の称号を得た『剣聖』をモノにできるというのが大きいらしい。

 いわば、この国の軍事力として見てるというわけだ。


 ――それはそうだ。


『剣聖』ともなれば、もはや『歩く兵器』と呼べよう。


 こんな思惑が入り乱れるこの縁談話が今、少々厄介な事になっている。

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有能過ぎる俺は無能を演じる 〜めんどう事はもう嫌なので是非とも貴族家から追放して下さい!〜 ピコ丸太郎 @kudoken

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