第4話:「俺たちの戦術は、なんだかんだでいつもこれだ!」

「さあ、行くぞ!」


カズマの声が響き、災厄の王との戦いが始まった。


「ククク……無駄な足掻きだ」


災厄の王は重々しい声で呟くと、巨大な剣を振りかぶり、ダクネスへと襲いかかる。剣が振り下ろされるたびに、空気が震え、その圧力が凄まじいことがわかる。


「ふふっ……来い!」

ダクネスはその一撃を全身で受け止める覚悟で前に出る。彼女の目は興奮に輝いていたが、カズマはその様子に冷や汗をかきながら叫んだ。


「お前、マジで無茶するなよ! 何度も言うけど受け止めるだけがタンクの役割じゃないんだぞ!」


だが、ダクネスは一歩も引かない。巨大な剣が彼女に迫るが、驚くべきことにその剣は寸前で止まった。まるでダクネスが立ちはだかることを見越していたかのように、災厄の王は微笑を浮かべていた。


「ほぅ……貴様、なかなかの覚悟だ。しかし、その覚悟は無駄だ」


災厄の王は剣を振り上げたまま、逆手に取りダクネスを軽々と吹き飛ばした。重装備の彼女が一瞬で弾き飛ばされ、木々に激突する。


「ぐっ……」


ダクネスはすぐに立ち上がろうとするが、今度は追撃の一撃が彼女に迫る。だが――


「アクア!今だ!」

カズマが叫ぶと同時に、アクアが前に飛び出し、杖を掲げた。


「これでも喰らいなさい! ゴッドブロー!」


アクアの拳が輝き、神聖な力が災厄の王へと向かって放たれる。しかし――


「ふん、神の力など、我が前では無力だ」


災厄の王はアクアの一撃を軽く腕で払い除けた。アクアはその反動で弾き飛ばされ、地面に転がる。


「……えぇぇ!? なんで!? 私の神聖な力が効かないなんておかしいじゃない!」


「いや、むしろ効かないほうが普通なんじゃないか……」

カズマは呆れながらも冷静に状況を分析する。災厄の王は、ただの力任せの相手ではない。これまでの幹部とは明らかに次元が違う。


「どうする、カズマさん!」

アクアが必死に立ち上がりながらカズマに叫ぶ。


「どうするって……いつも通りだよ。俺たちにできることは一つしかない」


カズマは静かに答えた。そして――


「めぐみん、準備はいいか?」


「もちろんだ。エクスプロージョンの準備は完璧だ……!」


めぐみんがニヤリと笑い、魔力をさらに高める。カズマは大きく頷くと、作戦を開始した。


「アクア、ダクネス、時間を稼げ! その間にめぐみんのエクスプロージョンで決める!」


「了解だ、カズマ!」

ダクネスは再び剣を構え、災厄の王の攻撃を受け止めるために立ち上がる。その頑丈さに感謝しつつ、カズマは自身も魔力を集め始めた。


アクアもアタッカーとしてではなく、サポートに回ることに切り替え、カズマたちに女神の加護を与える。


「神よ、私に力を……! セイクリッドターンアンデッド!」


アクアの神聖な光がカズマたちに降り注ぎ、一時的に力を増幅させる。


「よし、これで俺たちの生存率が少しは上がったな……!」


カズマは心の中でほっとしながらも、決して油断せずに災厄の王の動きを注視する。


「カズマ、準備ができた! 私の力、今ここで解放する……!」


めぐみんの魔力が爆発的に高まる。彼女の周囲に集まる膨大なエネルギーが視覚的にも明らかであり、彼女の決意は揺るぎない。


「よし、ダクネス、アクア! 退け!」


カズマの叫びに応じて、ダクネスとアクアが即座に後退する。災厄の王もその異常な魔力を感じ取り、警戒の色を浮かべている。


「エクスプロージョン!」


めぐみんの叫びと共に、空を裂くような大爆発が災厄の王を中心に巻き起こった。大地が揺れ、耳をつんざく轟音が辺り一帯に響き渡る。森全体が光に包まれ、その衝撃波が遠くまで届くほどの威力だ。


「よっしゃあ! やったか!?」


カズマは歓喜の声を上げる。これまでの戦いでも、めぐみんのエクスプロージョンは数多くの敵を一撃で葬ってきた。今回もそれに違いないと思っていた。


だが――


「ククク……無駄だと言ったはずだ」


爆煙の中から、漆黒の鎧を纏った災厄の王が悠然と姿を現した。鎧に僅かな焦げ跡が残るものの、その威圧的な姿に変わりはなかった。


「な、なんだと!? あのエクスプロージョンを食らって無傷だって!?」


カズマは驚愕の表情を浮かべた。これまでエクスプロージョンに耐えた敵などいなかった。それほどまでに強力な魔法が効かない相手が現れたことに、戦慄を覚えた。


「貴様ら、何度も言わせるな……その程度では我が力の前では無力だ」


災厄の王が再び剣を構え、ゆっくりとカズマたちに歩み寄ってくる。その姿はまるで絶望そのものだった。


「やべぇ、これは本格的にヤバい奴だ……」

カズマは後ずさりしながら、何とかして状況を打開する方法を考えた。


「くそ、こうなったら……!」

カズマは素早くスキル「ステータス窃盗」を発動した。災厄の王に向けてそのスキルを使い、相手のステータスを少しでも奪おうとする。


「ふん……貴様、そんな手が通じると思うか?」


災厄の王はカズマの行動を見抜いていたかのように、彼の窃盗スキルを無効化する。しかし、その瞬間、カズマは別のスキルを発動していた。


「これが本命だ! フリーズ!」


カズマは氷の魔法を王の足元に放ち、地面を凍らせた。災厄の王は一瞬動きを鈍らせ、その隙を見逃さず、カズマは叫ぶ。


「今だ、みんな逃げるぞ!」


「えぇ!? 戦うんじゃないの!?」

アクアが驚くが、カズマは必死に逃走を提案する。


「無理だ! あんな化け物、まともに戦って勝てるわけないだろ! 俺たちの得意技は、逃げることだ!」


カズマの言葉に、仲間たちは驚きつつも、従うしかなかった。彼らは全力でその場を離れ、災厄の王から距離を取る。


「ふん……逃げられると思うなよ」


災厄の王はゆっくりと彼らの後を追い始めた。だが、カズマたちは必死に森の奥へと走り続けた。

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