画時代的発表の記者会見

第6話

「何ですって⁈」

 ラムル・ガズーは内線を受けて慌ててテレビの電源を入れた。大画面に映し出された光景は、自社で開発していたはずの新製品が、他社によって発表されているところだった。


──まさか、裏切られた?

 後の祭りだった。権利を持つ本人が画面の中で製品の特長を説明しているのだから。


──でも、彼はお金で動くような人間ではなかったはず……

 ラムルは現在行われている会見が、自分を騙す目的のドッキリではないだろうかと一瞬淡い期待すら抱いた。


「社長!」

 社員たちの慌てふためくようすが非情な現実を突きつける。


「何がどうなっているの? 誰か……」

 せめて、彼の身にのっぴきならない事が起きたのだと思いたかった。生命の危険とか、裏切りを天秤にかけてでも遂行しなければならないほどの理由……


 信頼を寄せていたことがあだになった、いや、それとも自分が信頼に値する人間ではなかったのか、その思いがラムルの頭の中で繰り返し繰り返し回り始めた。

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