瞳に宿る優しさ
第7話
「いいんだぜ、ずっとここにいて」
「迷惑じゃない?」
本当なら家出娘に言うような言葉じゃない、と思いながら、正樹は自分を見上げる由香に静かに笑い掛けた。
「ああ、しばらくはここにいろよ」
「うん、ありがとう」
「落ち着いてからさ、そのあとどうするか決めたっていいだろ」
「うん」
由香がようやくほっとしたように小さく笑った。
有無も言わせず確認した由香の身体には、着衣の下にまごうことのない虐待の跡が鮮やかにいくつも刻印されていた。
自分に何ができるかなど分からなかったが、正樹はとにかく由香を家に帰すことだけはしたくなかった。
こういう場合どこに相談すればいいのかなんて、ずっと裏社会で生きてきた正樹には分からなかった。ちゃんと、信用できる誰かに聞いて、それからにしよう、と思った。
探されるだろうかという不安もあったが、少なくとも今日はあの家に帰らなくてもいいのだと思うと、由香はまるで拾い上げられた小さな捨て猫のような気持ちになった。
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