伽藍神の鎮座する金色の堂

第4話

「送信完了。これで俺たちは億万長者だ」

 最後にリターンを押し下げて、ジャグアが言った。


「そうか、ご苦労だった」

 ふてぶてしさを隠そうともしない面立ちのハイトルは、天才ハッカーであるジャグアに向かって感情の伴わない返事をした。


「これで、核保有国は、自分たちのブツで自滅するか否かを選ばなければならない」

 全てのコントロールを奪い、システムを改ざんしたジャグアは、鉄壁のプログラムを人質として、解除キーを売る、というハイトルの計画に乗った。


 発動したプログラムを、期限内に自力で止めるなら止めてみろ、という自信に裏打ちされた計画でもあった。


「あとは待つだけ」

 ジャグアはハイトルの裏切りを懸念していることを悟られないように、努めて明るく言った。


──この男は油断ならない……。金の流れは万全の対策を施したが、問題はこいつに殺意があるかどうか……


「ああ。タイムラグを設けてあるからな。最初の爆発を知れば否が応でも泣きついてくるさ」

 計画を持ち込まれた時のハイトルが、まるで別人だったことを思い出し、ジャグアは自分には人を見る目がなかったと今更ながら悔やんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る