第47話

部屋へ戻るとシャワーの音がする



愛未が先に入ったんだ




ソファーに座って携帯を見ると



”着信1件 東城隼人”



という文字が飛び込んでくる




時間を見るとついさっきだ



怒っているかな……



恐る恐る電話をかけると、



「あ、夏月さん夜遅くにごめんね」



すぐに電話に出てくれた





……普通に優しい声だ



私が安心していると、



「今日はごめんね」



そう言って謝ってくる




「私こそ帰ってしまってごめんなさい」



言いたいことは他にあるけど、契約の希望も捨てられないから余計なことは言わない




「彼に怒られたよ」



五十嵐、何か言ってたもんな




「私の部下が失礼しました」



「いや俺が悪いんだよ、妻がいるって聞いただろ?」



「でも上手く行ってないんだ」




上手くいってなくたって関係ない



離婚していない限り不倫になるんだから



「そうだったんですね」



私は素っ気なく答える




「彼も人のこと言えないくせにね」



……??



彼って五十嵐のことだよね



何でそんなこと言うんだろう




「彼は前の会社で女上司と不倫して辞めたらしい」



え?



五十嵐が不倫?



だから女上司が苦手なの?



衝撃的すぎて何も言えない




「彼が前働いていた会社に知り合いがいるんだ」



そうだったんだ……



だから五十嵐は東城さんのことを知っていたのかな




「彼イケメンだし夏月さんも気をつけなよ」



「あ、はい」



少しイラっとしたけど一応返事をする



東城さんが言えること?



私が五十嵐とどうこうなるわけないのに




「あと、気が変わったらまた連絡して」



そう言って電話を切った



気なんて変わる訳ないじゃん



私はイライラした気持ちを堪える



契約のためにそこまでするつもりなんて絶対にない




五十嵐が不倫?



それがショックすぎて信じられない



ただの噂であってほしいんだけど



私はテレビをつけて気を紛らせた

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